【良い予実管理とは】#3 予実管理、現場のモチベーション維持の話。組織を巻き込むための権限委譲
この記事は、経営企画に造詣の深い、元DMM.comの経営企画で現在はフリーランスの井上伸也さんとの予実管理に関する対談シリーズです。
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予算にコミットするモチベーションを維持する仕組み
山本:モチベーションで言うと、「この売上予算を作ったのは自分だからやらなきゃ」という考え方はプロセスの中で大事だと思うのですが。そのあたりのコントロールはどうされていましたか?
井上:会社のステージによって対応を変えていました。
まず、財務会計一本で予算を作れるフェーズだったら、トップダウン型の数字で管理できると思っています。
管理会計を導入したタイミングで、事業部や商品が複数ある場合は、予算策定と一緒に予算を使うための権限委譲も一緒にしていかないといけません。
例えば予実ナイトでも「部長レイヤーの予算意識醸成が課題」とのご質問がありましたが、(僕の経験で言うと)予実管理導入の1年目は役員と握って予算編成をし、2年目は部長レイヤーと一緒に予算を作りました。その際同時に職務権限規定も変え、部長陣へ権限委譲をし、予算意識の醸成を試みました。
大企業の方だとあまり意識しないと思うのですが、会社設立時に作った業務分掌規定や職務権限規定って頻繁にはアップデートされないんですよね。
ですから、権限委譲をするタイミングは予算策定に取り組み始める時が一番いいんです。僕は予実管理導入2年目のタイミングで、法務と連携しながら、「役員の決裁権限いくらまで」「部長はいくらまで、人事権はここまで…」と権限委譲を進めました。
その結果、部長陣から数字を管理する意識を引き出せたかなと思います。
青木:すごくわかります。予算を使う人と、作る人を一致させるためには、権限委譲の話が絶対にでてきますよね。セットじゃないとできないです。
決裁権が制限されているのに、現場に渡しても管理できないこともたくさんあるなと思います。
山本:それは実務的におとすと、「あなたのチームは1人1回につきいくら決裁できますよ」というイメージですか?そして、自分の小さなPLを作れというイメージ?
井上:そうですね。まさにそんな感じです。
予実管理を形骸化させないために決裁権もセットで変える
井上:仕組みをうまく回すための工夫を補足すると、どの予算にも必ず「雑費」を入れていました。
すごく極端な話、交通費の上限が20,000円だけど、30,000円の飛行機に乗らないと出張にいけないケースもあるじゃないですか。でも、「交通費の上限オーバーは社長決裁です」となると、全然業務が進まなくなってしまう。
差額分は雑費で調整すると決めておけば、チーム内で決裁が回る。そういう仕組みまで作ることで、有機的にシステムが回っていきますね。
予算と職務権限規定をセットで考えると部長レイヤーのマネジメントがやり易くなります。
担当者一人で予実管理を進めるのは無理!
三輪:本質に迫れば迫るほど、大事(おおごと)になってしまう予実管理。若手にポーンと投げてできるものではないんですね……。
井上:「なぜ予実管理をするのか」は、現場の担当者が言っても動きづらいのは事実です。
普段予実を意識しない経営陣は、第三者から数字に関して突っ込まれた時にはじめて意識をするので、前にも出た通り何かしらのきっかけで経営陣が腹落ちしないと、会社全体を予実管理に巻き込んでいくことができないですね。
経営陣をしっかり巻き込んで行く工夫としては、モニタリング会議で、必ず会議体のオーナーを設けていました。代表やCFOをオーナーに設定して、彼らにオーナーシップを取ってもらい、経営企画で会議運営をしていました。
あとは、オーナーと実行責任者を分けた方がうまく回りますね。
三輪:オーナシップの所在を明確にし、実行責任者に依頼をするというイメージですね。社長が「うまくやっておいて」と頼んでおきながら、会議のオーナーになってくれないとうまくいかないんですね。
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