【良い予実管理とは】#2 経営管理が経営陣と現場の板挟みになってしまう問題

この記事は、経営企画に造詣の深い、元DMM.comの経営企画で現在はフリーランスの井上伸也さんとの予実管理に関する対談シリーズです。

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難しい経営企画の立ち位置

青木:最初に予算を策定して、現場のオペレーションを構築したり、ワークフローを整備していくじゃないですか。その中で、経営企画はトップと現場の板挟みになることが多いと思います。

今もうすでに2〜300人くらいの規模で、それなりに売上も立っている場合、途中から予実管理を始めるとなると、「今でも会社は回ってるのに、なんで新しい仕事が増えるの?」と現場の不満につながってしまう

経営企画は権限委譲されていなくて、でも現場を動かさなくてはいけなくて
現場が意図通りにってくれないことも多々あると思うのですが、どうやって進めたらいいでしょうか?

井上:旗振り役を立てるのが大事でしょうね。号令を掛ける人はCFOが一番いいですね。

CFOが旗振り役になってもらって「予実管理体制をきちっと作っていきましょう」「こういう会議体にしましょう」と、理想像を提案する。現状とのギャップを整理して、改革が必要な部分にGOサインをもらいます。

次にぶち当たる壁としては、リテラシーギャップがあります。
経営企画の人たちがわかっていて当たり前の会計の知識は、事業サイドの人にはわからない
まず、事業サイドの人たちに「なぜ予実管理が必要なのか」「今自分たちの会社がどこまで出来ているのか」「今できていない部分は何か」を認識してもらう必要がありますね。説明会や勉強会を開いて、まずは課題の認識をしてもらう。

そこまでベースを整えてから予実管理のワークフローを入れていきます。

ワークフローの導入も、いきなり全体を変えてしまうと必ず軋轢(あつれき)が生まれてしまうので、テストケース的に始めるのがいいかなと思っています。

青木:あー、わかります!

井上:個人的にご相談に乗っている企業さんでも、まずはテストケース的に導入するとうまくいくことが多いですね。
テストケースとして導入するパターンで一番わかりやすいのが、新規事業を立ち上げているところからはじめてみることです。新しい部門で予実管理の導入をはじめて、うまくいき始めたら既存の部門にも広げていく流れがいいかなと思います。

青木:この辺てすごく大事だと思っていて。理想像だけでなく「なんでこんなことやらなきゃいけないの?」「予実に差があると何がいけないの?」というのを、ちょっとずつ社内にナーチャリングしていく必要があるんですよね。とはいえ、実践するのはなかなか難しいとも感じます。

井上経営陣が予実管理の導入を主導してくれるのが、すごく大事ですね。強制力でワークフローを組み込んでしまう。参加者も、現場での活動が経営に直結していると実感ができると、会社に一体感がでてきます。
ただ、それが1クオーターできるかというと決してそんなことはなく、ある程度時間がかかるものだと覚悟して取り組んで行くべきでしょう。
実際に取り組んだときも、前さばきで半年くらいはかかりました。

経営陣の危機感が大事

青木:リクルートで経営企画にいた時の話ですが、その事業が競合に負けかけている時、V字回復の一番最初のきっかけは「経営陣が負けを認めた」ことでした。
社員が集められ、キックオフで経営陣が「まずは止血だ」と言い、組織全体が「そんなにまずいんだ」と認識できたのが大きかったです。

当時の予実管理は、利益を分配するというよりも、緻密に経費を削っていく感じで、予実管理に全体感がありませんでした。
私が予実管理の基本と考えている、「売上から得た利益をどうやって再分配するか」の観点がなかったんです。

まずは、負けを認めることが、とても大事だなと思いました。

井上共通しているのは「経営陣がふんどしを締め直した」点ですね。それがあって、はじめて経営企画が動く意味がでてくる。

青木:そうですね、危機感の共有があって、KGI・KPIの設定し直しがあり。ビジョンを見直して、戦略から巻き直しました。
その際に作られた構造改革チームが主導権を握ってバンバン進めていくという。実際に改革を進める主導権が誰があるのかを明確にしないと、全部チェンジはしないんだなというのを目の当たりにしました。

井上:実行する時は大義名分が必要で、そこさえ用意できればあとは進んでいく。きっかけとして大事なのは課題認識だけだと思います。

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