オープンワーク株式会社|IPO準備の実務に資する精緻な管理会計を実現
導入の背景
- 上場準備をきっかけに、集計や社内連携の業務効率化と見込のスピーディな可視化・経営報告を目指して、表計算ソフトからシステムへの移行を検討した。
- 見込の精度向上のため、勘定科目よりも細かい粒度での予実管理や差異分析を行いたかった。
「DIGGLE」選定の理由
- クラウドシステムが自社に適していた。運用開始までがスピーディでシステムメンテナンスをサービス提供側が行う点を評価。
- 変更箇所や内容が瞬時に把握可能で、リアルタイムな見込更新、週次での経営報告など細かいサイクルでのローリング(※2)に適している。
- レポート軸の切り替えなど柔軟性が高く、求める切り口での損益計算書(PL)作成や、ドリルダウンによる差異要因のスムーズな特定など高度な分析を行うことができる。
導入による効果
- 以前は月次の見込更新に約10日かかっていたが、リアルタイムな見込更新が可能になり、月次の見込や着地点が常に最新の状態になった。
- 週次での見込変化の経営報告により最新の見込を土台に営業利益のシミュレーションを行えるように。結果、追加投資等の経営判断を高い精度で迅速に行えるようになった。
- 期中での予算の見直しや、サービス別の収益性を算出するための配賦の実装などをスムーズに行うことができ、上場審査の準備に大きく貢献した。
転職・就職のための情報プラットフォーム「OpenWork」を運営するオープンワーク株式会社は、2022年12月16日に東京証券取引所グロース市場へ新規上場しました。同社では上場準備を機に予実管理の精緻化を目指し、システム導入を検討されました。
この記事では、予実管理クラウド「DIGGLE」選定の経緯や実際にどうご活用されているか、さらに上場に向けた予実管理体制の構築について、同社 執行役員でコーポレートユニット ユニットマネージャーの広瀬 悠太郎さんと、経理の石部 杏里さん、同じく経理の三木 百花さんにお伺いしました。広瀬さんは経理・経営企画業務を中心に管理部門全体を管掌されており、石部さんと三木さんは決算、開示、管理会計など経理業務全般をご担当されています。
※石部さんはオンラインでのご参加
導入背景
IPO準備を機に精緻な予実管理・スピーディな見込更新を目指しシステム化を検討
「DIGGLE」導入前はどのように予実管理を行っていましたか?
広瀬:2019年頃から体制を整え、予算と実績の差異分析を始め、2020年頃から月次での見込管理を始めるなど予実管理を本格化しました。当時はエクセルで予実管理を行っていました。よくあるやり方だと思うのですが、各部署の部署長にそれぞれ予算や見込記入用のエクセルを配って、記入後に回収して経理でひとつのエクセルに集計していました。
エクセル管理からシステム化を検討された理由やきっかけを教えてください。
広瀬:大きなきっかけはIPO準備でした。エクセルでの予実管理だと、情報収集の工数や手間が大きく、見込がスピーディにわからないという課題があり、システム化を検討しました。当時は部署の数が6つほどだったので、6人から見込を回収するのですが、それぞれ個別で質問や確認などコミュニケーションが複数回必要だったり、1つでも間違いが見つかるとそれまでの集計を全部やり直さなければいけなかったりと、とにかく人の手がかかっていました。また複数回のコミュニケーションを行い集計という流れだったので、月次の見込を取りまとめるだけで10日前後かかるなど、月の中旬の経営報告までの工程が複雑でした。そのため、集計や各部との連携といった業務を効率化し、見込をよりスピーディに可視化・経営報告したいと考えていました。
企業の成長にとって、スピード感は欠かせない要素ですよね。我々のお客様の多くも、導入前に課題として感じておられたポイントです。その他に実現したかったことはありますか?
広瀬:上場を目指すにあたって見込の精度は重視していたため、勘定科目よりも細かい粒度での予実管理・分析ができる仕組みを求めていました。そのため、勘定科目から各予算項目へのドリルダウンや、会計システムとのスムーズな実績値連携も要件として考えていました。また、予算の期中修正ができるよう、バージョン管理ができることも重要でした。最初は会計システムの予実管理機能を使おうと考えたのですが、勘定科目よりも細かい単位での管理や求める切り口での管理ができず、予実管理用のシステム導入を検討しました。
選定理由
細かいサイクルでの見込更新に適していて、求める切り口での損益計算書(PL)作成・分析をスムーズにできる点が決め手
予実管理のシステム導入にあたって、クラウドとオンプレミスどちらも検討されましたか?
広瀬:オンプレミスも一応視野には入れていましたが、クラウドの方が良いだろうなと思っていました。オンプレミスだと初期開発に時間がかかり運用開始が遅くなってしまう点や、メンテナンスの依頼に都度一定のコミュニケーションが必要で社内に技術面を理解している専任担当者をおく必要がある点などが懸念でした。クラウドだとサービス提供側でしっかりメンテナンスしていただけるので、社内体制も踏まえてクラウドの方が適していると判断しました。
クラウドサービスを中心に探された中で、「DIGGLE」をご採用いただいた理由を教えてください。
広瀬:理由はいくつかありますが、大きなポイントは二つです。一つ目は「スナップショット機能(※1)」です。週次での経営報告など、細かいサイクルでのローリング(※2)を行いたいと考えていたので、時点時点でのデータをしっかりバックアップできて変更箇所や内容を瞬時に把握できる点がよかったです。二つ目は損益計算書(PL)のデータ取り込み方法や切り口の柔軟性が高い点です。実績は総勘定元帳を取り込むので明細情報まで「DIGGLE」に蓄積でき、要件であったドリルダウンによる差異要因の特定や、レポート軸の切り替えにより求める切り口での分析が可能でした。
あとはエクセルで感じていた課題を解消できて業務効率化を行える点や、リアルタイムでの見込更新をする運用にUIが適している点など含め、総合的に一番良いと判断しました。
※1:スナップショットとは、バージョンの記録、呼び出しをすぐに実行できる機能。
※2:ローリングとは、経営計画を経営環境等の変化に対処するために定期的に見直し・修正を行うこと。
活用効果
効率的かつ高精度な管理会計が可能になり、上場審査資料の準備に貢献
「DIGGLE」導入により、全社的に予実管理フローはどう変わりましたか?現在の予実管理体制について教えてください。
三木:「予算ID(※3)」を活用して、勘定科目よりも細かい粒度での予実・見込の管理を行なっています。以前は月次の見込更新だけで約10日かかっていましたが、現在は各事業部で変更が発生すると分かった時点で更新をしてもらっているため、月次の見込や着地点がリアルタイムで把握できるようになりました。
石部:見込更新がリアルタイムになったことで、変更があるたびに「その費用は月の予算として正しく取られているか」を確認でき、また月次の締め作業中に月ズレ等の予実差異の確認を終えられるようになるなど、予実管理の精度が大きく向上しました。今では月次決算が締まる6営業日目には予実突合と差異分析が完了しています。
導入により、どのような効果を感じていただけていますか?
広瀬:リアルタイムな見込更新が可能になったことで、週次の経営報告で前回見込からの変化を報告できるようになり、経営判断の質とスピードが向上しました。リアルタイムな見込更新はエクセルだとできなかった部分です。追加投資には目標営業利益を達成できるかを踏まえた判断が必要ですが、リアルタイムの見込を土台にしてシミュレーションできるのでより精度高くスピーディに意思決定できるようになりました。
上場準備に関して「DIGGLE」が貢献できた部分はありますか?
広瀬:とても助かりました。まず先ほどの話のように精度の高い予実管理フローが確立できたというところは大きな効果です。またIPO特有の話だと、やはり計画(予算)の作り直しが何度も必要なので、それが「DIGGLE」だと非常にスムーズでした。実際、弊社だと1年で3、4回作り直しをしたのですが、データが「DIGGLE」上に一元管理されていて前回作成した計画をコピーして新計画を作成できることや、バージョン間での比較や変更箇所の把握がしやすかったので、すごく助かりました。また弊社の上場の特徴として、新規サービスの成長性を説明できることが重要だったため、その新規事業の収益性の可視化が必要でした。このための費用の配賦を「DIGGLE」で大きな手間なく実現できたので、この点もIPO準備への影響がとても大きかったです。
上場審査にあたっては作成・提出が必要な資料が膨大になります。求める管理会計の実現をご支援できて大変嬉しく思います
※3:予算IDとは、「部門×勘定科目×予算内容」の組み合わせで自動発番される「DIGGLE」内の管理ID
今後の期待
グラフの拡張性と一般的な分析項目のテンプレート化に期待
最後に、プロダクトへのフィードバックや今後ご期待いただける点をお聞きかせください。上場準備にあたって「もっとこんな機能が欲しかった」という点もあればぜひ教えてください。
広瀬:IPO観点では、損益計算書(PL)の計画や見込みを柔軟に作成でき、機能も充実していている点が良かったです。期待する点でいうと、グラフの拡張性がもっとあると嬉しいです。今は「DIGGLE」から必要なデータを出力してエクセルでグラフを作成しているので、全て「DIGGLE」上でできるようになるとより便利だと感じます。
石部:求める切り口や分析に合わせて柔軟な設定ができるようにはなっていると思うのですが、例えばCVP分析などは、デフォルトで分析の型があるとより便利だと思います。経営報告等でよく用いられる分析に関しては、ボタン一つでできるようになると会計知識がない人でも活用しやすくなりますね。
引き続きいただいたフィードバックを元にプロダクトの進化に注力してまいります。本日はありがとうございました!