仰星コンサルティング本田氏を招き、「ユーザー視点でのシステム導入の勘所とは?」をテーマにセミナーを開催しました(前編)

会社の内部管理体制を整備するにあたって、システム導入を検討することも多いのではないでしょうか。

その場合、現在行っている業務をそのままシステム化するだけではなく、過去からの慣習で行っている不要な業務が存在しないか確認のうえ、ポイントを踏まえた導入を検討する必要があります。

先日、DIGGLE株式会社は、「ユーザー視点でのシステム導入の勘所とは?」をテーマに、仰星コンサルティング株式会社のパートナー公認会計士・本田 直誉氏をお招きして、セミナーを開催しました。

この記事では、同セミナーの内容を前・後編の2回にわたりご紹介いたします。前編では、システム導入の現状やシステムの具体的な種類などについて解説します。

システム導入の現状

多くの企業で、システム導入の満足度は低いと言われています。

日経コンピュータが2018年に実施した調査によると、1,745件のシステム導入プロジェクトのうち約半数の47.2%が失敗という結果でした。この調査では、スケジュール・コスト・満足度の3条件を満たすプロジェクトを成功と定義しています。(スケジュールは、計画通りまたは前倒しで完了した場合。コストは、計画通りまたは計画より少ない金額で収まった場合。満足度は、経営層とエンドユーザーがともに満足、またはやや満足と感じている場合としています。)

システム導入の満足度が低くなる理由は様々ですが、ベンダー側だけに原因がある訳ではなく、依頼する側のユーザーにも原因があるケースが往々にしてあります。そのため、システム導入の満足度を高くする方法を理解しておくことはユーザー側にとっても重要です。

システムの種類

システムは観点によってさまざまな分類があるため、システム導入をする場合には以下のいずれの種類に該当するのかを確認していきましょう。スライドでは、DB(データベース)、構築方法、利用形態の観点による分類をご紹介しています。

※スライドには代表的な分類のみ記載しています。

基幹システムとERP

まず基幹システムとERPについて説明します。

基幹システムは、会社を運営する上で欠かせない業務を管理するためのシステムやソフトウェアの総称です。代表例を挙げると、販売管理システムや在庫管理、購買管理があり、他にも、生産管理や勤怠管理などがあります。基幹システムは、システムごとにデータベースがあり、それぞれ独立したシステムになっているので、システム間でデータをやりとりする際には連携が必要です。企業は成長段階に入ると基幹業務も必然的に増えていくので、基幹システムを導入することで人件費を削減して、人的リソースを利益アップのために使えるようになります。

ERPはEnterprise Resource Planning(企業資源計画)の略で、統合基幹業務システムと呼ばれています。基幹システムとの違いは、ERPはデータベースが一つであり、企業内の情報をリアルタイムで一元管理できる特徴があり、システム間の連携がスムーズです。最近は、クラウド型のERPがトレンドになっています。

パッケージシステムとスクラッチシステム

パッケージシステムのメリットは二つあります。一つ目はスクラッチシステムに比べて初期費用が安いことです。すでに完成しているシステムのため、業務内容が一般的な企業におすすめです。二つ目は、動作する環境さえあれば、導入や運用までの期間がスクラッチシステムと比較して短期間で済むことです。

一方で、デメリットは三つあります。一つ目は、カスタマイズ可能であっても、スクラッチシステムほどの自由度がないこと。二つ目は、標準的な業務に対して作られていることが多いため、独自性の高い業務や複雑すぎる業務には対応できない可能性があること。三つ目は、自社の業務とシステムの標準機能が一致しない場合には、システムに合わせて現状の業務フローの変更が必要になる可能性があることです。システムを自社の業務に合わせる場合には、カスタマイズが必要なので、初期費用が高額になる場合があります。

スクラッチシステムのメリットは三つあります。一つ目は自社の業務に対応したシステム構築が可能なこと。二つ目は独自性や複雑性の高い業務にも対応可能なこと。三つ目は、業務拡大や変更によるシステム内容の変更にも対応可能なことです。

デメリットは二つあります。一つ目は、オーダーに合わせて一から構築するため、パッケージシステムに比べて初期費用が高額になること。二つ目は、開発期間がかかるため、パッケージシステムと比較して導入や運用まで時間を要することです。会計や人事関連、予算管理などの定型的なシステムであれば、カスタマイズなしで導入することが多いですが、販売管理や在庫管理などは、業務パターンが企業によって異なるため、必要に応じてカスタマイズして導入するケースが多いです。

以前と比較すると、パッケージシステムを利用した方が安価で良質なものが作れるようになっているため、一からシステム構築をすることは少なくなり、パッケージシステムを利用することが多くなっています。そのため、今回はパッケージシステムを想定して説明をします。

オンプレミスとクラウド

両者は物理的にどこにあるのかの違いによって主にセキュリティ面に影響するので、それらを踏まえて選定をすることが多いです。

オンプレミスは、サーバー・情報システムを自社で導入・運用することです。メリットは二つあります。一つ目は、社内ネットワークでアクセス制御ができるため、セキュリティ対策の強化が可能なことです。二つ目は、ハードウェアからソフトウェアまで社内で確保できるため、システムを柔軟にカスタマイズできることです。また、他のシステムとの連携も図りやすく、クラウドよりもカスタマイズできる範囲が広いです。

一方で、デメリットは二つあります。一つ目は、サーバーなどのインフラシステムの準備と維持に時間とコストがかかることです。万が一故障が起きた場合には、自社負担で交換や修理をする必要も出てきます。二つ目は、システムやサーバーの運用管理を自社で行う必要があるため、専門知識を持つ人材の確保が必要なことです。ネットワーク障害などのトラブルが発生した場合にも自社で対応する必要があります。

クラウドは外部が提供するサーバー情報システムを利用するため、メリットデメリットはオンプレミスの逆となります。メリットの一つ目は、導入費用を抑えることができ、オンプレミスのようにサーバー環境に必要なシステムを購入する必要がないことです。二つ目は、ベンダーと契約するとスムーズに利用を開始できるため、比較的短期間で導入できることです。三つ目は、自社でのシステム構築や管理が不要なため、サーバーの管理費もかからず、管理費や維持費を削減できることです。

一方でデメリットは二つあります。一つ目は、インターネットを介してアクセスするため、セキュリティ面でのリスク(情報漏洩やデータ消失、サーバー攻撃、不正アクセスなど)があるため、セキュリティ対策が必要になります。二つ目は、オンプレミスと比べるとカスタマイズ性が低いことです。なお、クラウドはサービス形態によってSaaS、PaaS、IaaSの3種類に分類されます。

レポートの後編では、具体的なシステム導入までの流れと、ポイントについて解説します。後編はこちらから。

DIGGLE株式会社では毎月、予実管理業務に関するセミナーを開催しております。ぜひご参加ください。

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