4四半期先の着地を見通し、施策投資を前倒し。事業責任者が主導する「自律的に数字を見て動く組織づくり」
導入背景
- セイコーグループで求められる管理水準に対して、エクセルでの予実管理に限界を感じた
- 現場の部門責任者ごとに予実管理の集計ロジックが異なり、見込管理が形骸化しつつあった
選定理由
- 他ベンダーから「実装できない」と言われた複雑な管理会計要件を実現できると判断したため
活用効果
- 全社フォーキャストの更新頻度が、2ヶ月に1度から週次頻度へ高速化
- 経営会議で事実確認に充てていた時間が1時間から30分へ短縮。上位役職者が議論する時間を捻出
- 4四半期先までのローリングフォーキャストによって、採用計画や代理店施策などの投資判断を前倒しで行えるようになった
- 自他部門の数字を見る慣習が現場で広がり始め、事実に基づいて意思決定し行動する文化が形成され始めた
株式会社アイ・アイ・エムは、性能管理ソフトウエアの提供をはじめ 法人向けのIT運用やセキュリティ領域を中心に、自社開発製品や他社製品の販売、導入・構築支援などを手掛ける企業です。創業以来、ストック型のビジネスを展開し、現在は強みとしてきた性能管理領域を軸に、IT運用・可視化・最適化を支援する企業として事業の多角化を進めています。
本記事では、経営管理の 課題に事業部の立場から向き合い、「Diggle(ディグル)」の導入、意思決定基盤の進化を主導された同社 営業第三統括部 執行役員の宮崎さん(以下、敬称略)に、導入の背景から現在までの道のりを伺いました。
導入背景
グループ入りで一変した管理水準。前週比の差異要因を説明する体制へ
まず、御社の事業内容と宮崎さんの担当業務について教えてください。
宮崎:当社は、祖業である性能管理ソフトウエアの開発・販売をはじめ、法人向けのセキュリティ関連製品の販売から導入・構築までを支援しています。事業モデルとしては、1988年の創業当初からストック型ビジネスを続けています。昨今SaaSと呼ばれているサブスクリプション型のシステムベンダーさんに近く、年間利用料をいただく形が基本です。
私はというと、営業第三統括部を管掌していて、大きくは2つの仕事をしています。1つはアカウント営業で、お客さまが抱えている課題に対して、当社の製品やサービスを提案する営業部門のプレイングマネジャーをしています。もう1つは私の第三統括部特有なのですが、自社製品を市場にどう浸透させていくか、というアイ・アイ・エム全体のプロダクトマーケティング戦略設計や経営管理を高度化する役割も担っています。

営業第三統括部は事業戦略も担っているのですね。事業戦略の責任者として、普段どのような数字を見ているのでしょうか。
宮崎:事業構造を考えるうえでも、売上原価は足元で常々目を向けていますね。自社製品だけでなく他社製品も取り扱っているので、仕入商材の原価管理が必要です。また、当社は単体では従業員数170名ほどの会社なので、システム構築のプロジェクトではグループ内外のBP(ビジネスパートナー) の方々にも協力いただいており、そうしたBPさんの流動的な原価も管理が重要になります。
製販の両面で原価コントロールが肝なのですね。2017年にセイコーソリューションズ社の傘下にグループインされていますが、経営管理体制に変化はありましたか。
宮崎:管理会計の在り方が大きく変わりましたね。セイコーグループのガバナンス水準に沿って細かく事業数字を見るようになっていきました。もともと当社は独立系のソフトウェアベンダーで、数字の管理はわりとどんぶり勘定な部分があったんです。そこに対して、グループインと併せて就任した経営陣により計数管理や意識改革が行われていきました。
計数管理について、具体的にはどのような変化があったのでしょうか。
宮崎:週報が徹底されるようになり、その中で前週との差分とその要因を明らかにし、どのアカウントが伸びているのか/伸びていないのか、それは何故なのか、を説明する慣習が全社的に浸透していきました。どの部門でどれくらいの売上とコストが発生していてどの製品群の利益が伸びているのか、という観点での会話が増え、複数の切り口から事業数字を分析することが求められるようになった印象があります。
上位役職者たちが、エクセルの集計作業に時間を奪われていた
求められる管理会計の水準が高まっていく一方で、運用はエクセルだったそうですね。どのような状況があったのでしょうか。
宮崎:取り入れられていった管理会計の考え方自体はすごくよいものだと直感しましたが、エクセルを使ってそれを運用することには抵抗がありました。というのも、エクセルは個人が単一のファイル内で管理していく分には使い勝手がよいですが、管理レイヤーや部門別など複数人で複数のファイルで管理している場合、一つの数字の見込が変わるたびに複数箇所を修正する必要があります。当社の場合、四半期ごとにファイルを分けて管理していたので、Q1からQ4までの別シートにそれぞれ転記して、どこを変えたのか分かるように、変更箇所には手作業でセルに色を塗っていました。このオペレーションが、私としてはすごく嫌だったんですよ。

宮崎:バージョン管理の問題もあって、どのファイルが正しいのか分からなくなったり、データの受け渡しに時間がかかったり。コピペなどの作業も多く、オペレーションミスが起きることも多々ありました。 さらに問題だと感じていたのは、こうした作業に、それなりに上位の役職者たちが時間を使っていたことです。統括部長クラスが、夜遅くまでエクセルの修正や色塗りに追われていることもありました。本来であれば、集計された「疑う必要のない正しいデータ」が手元にあり、それを見て「どの課題がセンターピンなのか」「どういう施策を打つべきか」などを考えることに統括部長たちは時間を使うべきです。それなのに、データを整えるところで時間を取られている。率直に「もったいないな」と感じていました。
現場責任者ごとの属人化した算出ロジックが、見込管理を形骸化させていた
各営業部門での見込管理は、どのような状況だったのでしょうか。
宮崎:当社では各統括部長が部門ごとの中期計画を作っていて、その中期計画に対して「現状数字はどうで、成り行きの今後見通しはどうで、達成できそうか否か。未達見込の場合は、その原因・課題をどんな手段で解決できるのか。」といった内容を報告しています。ただ以前は、統括部長によって参照データの出し方や数字の集計方法が異なっていることが多々ありました。当然ですが、共通していないそれぞれのロジックで出された見込数字や現状分析を語り合っていると、お互いが語る事実が本当に正しいのかどうか判断がつかなくなります。こうした状況だったので、見込管理はどこか形骸化していたようにも思います。
見込数字の正しさが担保されていない中だと、予実の差異を改善するアクションも強度が低くなりそうな気がします。実際、現場にはどのような空気があったのでしょうか。
宮崎:月内で現場が見込数字をエクセル集計していても、月次決算を締めて実際の会計データと突合してみると数字が違うことが結構ありました。そうなると、「いくら苦労して更新しても、最後はどうせ数字がズレてるんだろうな。」という感情になります。そう思うと、見込数字を更新する作業が不毛に思えて嫌になってしまうんですよね。見ている数字を信用できないせいで、その数字を見ながらアクションを変えていこうというところまで、なかなか至らなかったように感じています。
そうした状況の中で、宮崎さんが業務改善に動かれたきっかけを教えてください。
宮崎:それはもう、私自身がこのエクセルでの管理を 「面倒だな」と感じていたからですね(笑)。

宮崎:自分が集計や整理の作業を経験しているので、どこが面倒で、どこでミスが起こりやすいのかは分かっていました。この運用を継続することは、各部門の中期計画を実現していくうえでも課題だと考えたので「このオペレーションをやめよう」と、私が中心になって改善を進めることにしました。
選定理由
配賦など複雑な会計処理を伴う予実管理に適していた
予実管理システムの比較検討も宮崎さんが主導されたとのことですが、「Diggle」を選んだ決め手を教えてください。
宮崎:いつまでこのエクセル運用を続けるのだろうと思っていたときに、展示会で予実管理システムを提供している別の会社を見つけ、一度オンラインミーティングをしたんです。当社は配賦や予算編成の仕方がかなり複雑なので、その内容を説明したところ、「うちの製品では合わないかもしれない」と言われました。そこで、ほかに対応できそうな会社がないか聞いたところ、「Diggleならできるんじゃないですか」と紹介していただいたのがきっかけです。 それで実際にDiggleに相談してみたところ、やりたいことは概ね実現できるとすぐ判断できたので、比較検討にあまり時間をかけずにDiggleで即決しましたね。
表向けの導入目的は「業務効率化」、真の狙いは「自律的に数字を見て動く組織」
社内では、導入の目的や意義をどのように説明されたのでしょうか。
宮崎:統括部長陣など現場寄りのメンバーには「Diggleを入れたらオペレーションが楽になる」と説明して、オペレーショナルコストの削減を導入効果として伝えていました。ただ、それはあくまで短期的な期待効果でして、私の本当の目的は「自律的に数字を見て動く組織」にすることでした。
Diggleにデータが蓄積されてデータベース化されれば、いろいろなデータを自由に見られるようになる。そうすれば、自分たちが能動的に数字を見るようになるだろうと考えていました。単にデータを蓄積するだけでなく、自分たちで数字を見て、活用できるところまで持っていきたい。それが、Diggle導入のもうひとつの目的です。
さらに、データを自由に見られるようになれば、ほかの部門も数字に関心を持つようになると考えていました。「なぜこの部門は数字が低いんだろう」「なぜこんなに数字が上がっているんだろう」と、それぞれが自発的に数字を見て、分析するようになる。当社には「アメーバで物事を捉える」という考え方があるのですが、それを組織として体現させたかったんです。
単なる業務効率化ではなく、中期的には組織改革まで見据えていたのですね。管理会計が複雑とのことでしたが、実装にあたっての要件整理等でご苦労はありましたか。
宮崎:実装は正直大変でしたが、導入支援のカスタマーサクセス担当者さんには本当に助けていただきました。もし自分一人で導入を推進していたら、途中で投げていたかもしれません。毎週の定例ミーティングでこちらがやりたいことを伝えると、実際に形にして見せてくれる。それを見ながら「これは実装できる」「これは運用的に難しそう」などと一緒に整理していきました。

宮崎:私たちは管理会計のプロではありません。だからこそ、こちらの要望をそのまま受け入れるだけではなく、「こうしたほう がいい」とDiggle担当者の方から都度提案してもらえたのがよかったですね。自分たちよりもその領域を知っている専門家に支えてもらえるという意味でも、やはり餅は餅屋だと思います。
活用効果
全社フォーキャストは、2ヶ月に1度から毎週に。会議の時間は、半分に短縮。
「Diggle」導入後、どのような変化がありましたか。
宮崎:一番変わったのは、やはりオペレーショナルコストですね。以前は見たい粒度や角度での数字を出すまでに統括部長陣それぞれでかなり手間をかけていた印象ですが、Diggleでは見たい数字やそれらの比較・分析をみんな 簡単に出せるようになっています。また、以前は人によって集計ロジック等が異なっていましたが、今では全員が同じ前提で数字を見られるようになりました。
中期計画の見通し管理については、見込更新の頻度などその後いかがでしょうか。
宮崎:以前は各部門の中期計画に対して2ヶ月に1回ほどの頻度で着地見通しを出すのがやっとでしたが、Diggleでは現時点の最新値をすぐに確認できるので、現在は毎週金曜に着地見込の変化を確認できるようになりました。
ブランドの立ち上げや撤退を検討する際は、以前はどのように分析していたのでしょうか。現在、「Diggle」をどのように活用されているかもお聞かせください。
梅田:Diggle導入前は、新しいブランドを立ち上げる際に、新たにシナリオを作っていました。ただ、ブランドごとにファイルが1枚しかなかったので、数字を更新すると以前の数字が上書きされ、過去の状態と比較しながらシナリオを検討するのが難しい部分がありました。今は、「このブランドとこのブランドを仮に撤退させたら、売上と利益はいくらになるのか」といったシミュレーションやバージョン比較を簡単にできるようになりました。また、大きなブランドでは店舗など複数の販売チャネルを持っているため、ブランド全体だけでなく店舗単位でも、「売上が少し伸びてきている」「累計でどのくらい赤字になっている」といった推移を確認できます。
ちなみに、現在では全社で4四半期先の目標数字に対して、オントラックなのか未達トレンドなのかをローリングフォーキャストで見込管理しています。 あと、さらに加えていうと、経営会議での時間の使い方にも変化が出ていますね。Diggle導入前は数字やその背景・前提の確認に時間を使っていたためトータルで丸1時間かかっていましたが、今は30分ほどで終わります。そこで捻出された約30分を使って、各統括部長が持ち回りで、今取り組んでいる施策の詳細な状況等を共有する時間に使えています。こうした会議体運用ができるようになっているのも、よい変化ですね。
フォーキャスト更新の頻度が上がっただけでなく、上位役職者の会議体運営もスリム化しているのですね。宮崎さんが構想されていた「自律的に数字を見て動く組織」という点では、変化はありましたか。
宮崎:はい、まだ道半ばではありますが変化してきていますね。数字を集計・分析する作業に時間を取られなくなったことに加えて、“事業の進捗数字をブレイクダウンして確認できる箱”ができたことで、他部門のタイムリーな数字を手元で確認できるようになっています。私自身、他部門など社内の広域な数字を見るようになり、「自部門とは製品のポートフォリオが全然違うな」「なぜこのやり方をしているんだろう」「数字を見るによ い取り組みをしていそうだから話を聞いてみよう」などと考えるようになりました。
採用や代理店施策の投資判断を前倒しできる
現在は4四半期先を見てローリングフォーキャストされているとのことでしたが、先の数字を見通せるようになったことで、事業投資の判断に影響はありましたか。
宮崎:営業施策や採用の投資判断で、先手を打てるようになってきましたね。当社はストック型ビジネスなので、「この月でこの粗利の案件が受注できれば、来期のトップライン目標はこれくらい現実的になる。」といったことが見えるんです。そうすると、「この四半期くらいで人員増員できると収支バランスがいいから、採用計画を調整しよう。」といった思考や判断ができます。代理店施策でも、もう少しリワードを設定して代理店経由の販売をドライブできる余裕がある、といったことが見えるようになりました。「今どうなっているか」だけではなく、「これから事業を伸ばすために、どこへ投資すべきか」を具体数字と合わせて練れるようになっています。

営業施策や人員計画の投資判断にも貢献できているようでよかったです。最後に、定性面での変化もあれば聞かせてください。
宮崎:Diggleによって、事実に基づいて意思決定し行動する文化が形成され始めた感覚があります。全社的な数字と現場部門でのKPIとを紐付けやすくなり、権限に応じて見たい軸の最新数字を確認できるようになったことで、現場でさまざまな気づきが生まれやすくなってきている印象があります。実際、つい先日も技術部門から「Diggleでこの分析を出せるようにしてほしい」と言われたり、プロジェクト推進部門からも「現場KPIに金額指標を取り入れたいから、取引先単位でこの数字をDiggleで見れるようにしてほしい」などの相談がきたりしています。現場の各部門で「Diggle」という言葉が浸透してきていて、「自律的に数字を見て動く組織」へ徐々に近づいていますね。「予実管理システムの導入を通して、組織の意思決定基盤が進化したことを感じています。
本日はありがとうございました。