株式会社コスモスイニシア|ホテル別の収支が可視化され、社内議論も活性化

導入の背景

  • 精度の高い予実管理を実現するために、以下の課題を解決したかった。
  • 作業工数の削減:予算策定・予実対比には複数のエクセルファイルを使用していたことによる煩雑さに加え、特定の担当者に作業負荷が集中していたため、業務効率化を行いたい。
  • 予算策定の精緻化:売上・原価ともに多岐にわたる変数を適切に管理し、ホテル別売上・利益の予測精度を上げたい。
  • 予実分析の高度化:先を見通した打ち手を検討することに寄与する予実分析を行いたい。

選定理由

  • サポート体制の手厚さ・的確さ:導入時のサポートが手厚く、当社の宿泊事業を理解したうえで的確な提案を持ってきてくれたことが信頼できると感じた。
  • 実績取り込み、予実突合の簡便さ:実績ファイルのアップロードだけで自動的に集計・予実突合ができることで、工数削減に期待ができた。
  • 分析の柔軟性の高さ:予実の差異要因を瞬時に突き止められるドリルダウン機能や、分析軸が柔軟に設定できる点など機能が十分で、費用対効果を感じられた。

導入による効果

  • 実績反映の半自動化による工数削減:毎月の実績反映・予実突合が、約1営業日かかっていた作業からCSVアップロードで自動集計されることにより30分で完了するようになり、属人性の排除・工数削減を実現した。
  • 分析の即時化・高度化:見る人に合わせた粒度・分析軸でのレポートの即時作成に加え、BIツールを連携(※)させ構築したKPIのビジュアル化レポートによって、分析結果を踏まえた議論が活性化した。
  • 予実管理マインドの醸成:ホテル別での予実が可視化され、現場~経営層まで関係者全員が同じ目線で議論することができるようになった。
  • 予算策定の精度向上:予実対比が簡便に行えるようになったことで、予算策定時に「何を・どう」見直すべきかが明確化し、予算策定の精度が向上した。

株式会社コスモスイニシアは新築マンションやリノベーションマンションなどの住まいを提供するレジデンシャル事業、投資用・事業用不動産の開発・仲介・賃貸管理などを行うソリューション事業、ファミリー・グループでの中長期滞在に対応するアパートメントホテルの開発・運営を行う宿泊事業を展開する不動産デベロッパーです。

この記事では、同社の宿泊事業部が予実管理クラウド「DIGGLE」を採用するまでの経緯や導入後の効果などについて、同社デジタル推進部の河本 沙弥加さんと宿泊事業部の草野 晴菜さんにお話を伺いました。

導入背景

ホテル別での経営指標(KPI)を活用したより精緻な予算作成や、原価・利益の可視化を行いたかった

「DIGGLE」の導入前、宿泊事業部ではどのように予実管理をされていましたか。

草野:現在当事業部では28物件の運営を行っており、基本的に不動産の所有や開発をコスモスイニシアが、ホテル運営をグループ会社が担う形で事業を行っています。予実管理はグループ会社の計数管理担当と連携し、実施しています。

予算策定では、基本的に5ヵ年分の月別計画を立てています。「DIGGLE」導入前は、28物件を個別に予算を立てるのは難しく、エリア単位で過去の傾向を取るなどの形で大きく予算策定をしていました。

予算と実績の差が発生したときは、まずグループ全体の収支でどこに差が発生しているか確認した上で、どの物件で差が発生しているのかを物件個別の収支まで遡って調べていました。発生箇所を見つけても詳細の科目が「原価」でひとくくりにされている場合もあるので、原価の中のどの科目に差があるのかをマンパワーで探し当て、さらにどういう背景で起こっているかを深掘っていくというのを全て手作業で行っていました。現場のみなさんにそこまでの作業をお願いするわけにもいかず、経営ラインへの報告までに私とグループの計数管理担当者とで差異が大きい部分のみピックアップして報告していました。

月次が締まってから経営報告するまでのスケジュールはどういった流れでしょうか。

草野:約8~10営業日でコスモスイニシアとグループ会社の実績が共有されるので、共有後1週間程度で経営への月次報告を作成します。そのため1週間で手作業での実績反映、予実突合、差異要因調査、報告資料作成を行っており、それだけで一苦労でした。経営層からいただくフィードバックによっては新たな分析軸でのエクセルを作り資料化するなど、追加の対応が必要になることもありました。特にコロナ禍においては、様々な切り口での分析ニーズが多く、頻繁に追加対応を行っていました。

特に課題として感じられていたことや、実現したかったことは何でしたか。

草野:実現したかったことは二つあります。一つ目は業務効率化です。予実差異の確認作業の煩雑さと、分析軸を変えるための工数が大きいことによる作業コストを一番の課題として感じていました。またエクセルを作成できる人が限られ、作業の手間が集中してしまう・業務が属人化している点にも課題を感じていました。

二つ目は、ホテル別での原価・利益の可視化など精緻な管理を行い、利益予測の精度を向上させることです。そのため、ホテル別の特徴を捉えた予算策定を行いたいと考えていました。売上は比較的見通せていたのですが、大枠での原価設定であったため利益着地を出すことをかなり難しく感じていました。「蓋を開けてみたら良かった・悪かった」という話で終わるのではなく、予実分析を適切に行ったうえで先を見通した打ち手を検討できるようにしたいと考えていました。

宿泊事業部 草野 晴菜氏

選定理由

決め手は分析機能の柔軟性の高さと導入時のサポート体制

予実管理システムの検討の経緯について教えてください。

河本:コロナが落ち着きはじめた頃、次に向けて何ができるかを考えたときに、数字をきちんと使える状態にしていこう、エクセル以外の管理手法はないのかと考えるようになりました。

元々草野から、収支管理をしているエクセルが重たすぎて何とかならないかという相談を受けていました。その後、宿泊事業部の担当役員になった遠藤がシステムの活用に明るく、クラウドツールを活用したデータドリブンな事業のマネジメントをしようという方針になりました。その中で、原価管理をしっかり行うために、現場まで原価を把握できる状態をつくること(原価の見える化)と、予実の全体像を特定の担当者しか把握できない状態を解消すること(属人化の解消)がツール導入を検討する起点でした。

様々なサービスを調べたのですが、ERP製品は高額な印象があり、一方で安価なものはどうしてもエクセルに近づいていく印象でした。そんな中で「DIGGLE」を知り、費用対効果や機能面が十分そうだと感じたので、ご連絡しました。

原価管理をきちんとしたいという中で予実管理システムを検討されたということですね。その中で「DIGGLE」を選んでいただいた決め手があれば教えてください。

草野:これまでずっとエクセルで予実管理を行ってきたため、クラウドのシステムを活用できるか分からないという不安があり、手厚いサポートのあるサービスがよいと考えていました。その点、DIGGLEさんは検討したサービスの中で一番コミュニケーションに安心感があり、信頼できると感じていました。

加えて、当社・グループ会社それぞれで毎月実績情報のローデータファイルが作成されるため、ファイルのアップロードだけで実績反映と予実突合がすぐに行えるシステムであることで、工数削減が期待できると感じていました。

河本:先ほど言ったとおり原価管理をしっかり行えるようにしたかったため、機能面では予算と実績の差異をドリルダウンして原因まで素早く突き止められることが必須条件でした。あと「DIGGLE」で良いと思ったポイントは、分析の軸が柔軟に持てることと、草野と同じく導入の支援体制が手厚いことです。

また、単純に担当者との相性もツールを選ぶ上で大事だと考えていて、営業の松本さんからお話をお伺いしたときに「この会社なら一緒にできそうだな」と感じたので、そこからは比較的すぐに決めました。私はデジタル推進部に所属して5年目なのですが、今までの経験上社外の方と1度のコミュニケーションでQとAを一致させるのは難しいことだという印象を持っています。システム導入が始まっても、まず当社を理解いただくのに何ヶ月もかかってしまうとそれだけ活用が遅れてしまう点が懸念でしたが、松本さんは言ったことに対して的確なうえに、プラスアルファでご返答をいただけていたので、コミュニケーションのしやすさ・的確さも選定理由のひとつです。

導入効果

毎月の作業時間が大幅に短縮。予算・実績の可視化によって経営層から現場のメンバーまで議論が活性化した

御社では今ホテル別にKPIを設定するなど、ホテル別での精緻な予実管理を始められましたが、「DIGGLE」導入によってどのようなフローの変化や効果がありましたか。

草野:元々、実績反映だけで約1営業日かかっていた作業が、導入後はCSVのアップロードだけで実績取込が完了するため、実績反映から突合まで30分程度まで短縮されました。差異の大きい順に並べ変えたり、ドリルダウンで差異が発生している箇所をすぐに見つけられたりするので、予実の差異要因をすぐに把握できるようになりました。報告資料は、経営層と現場のそれぞれに向けてBIツールで作成しています。「DIGGLE」からBIツールはデータが連携できるようになっているので(※)、トータル1時間かからずにビジュアル化ができ、そこからの報告資料も素早く完成するようになりました。

これまでは分析の切り口を変える・追加する作業に非常に時間が取られていたのですが、「DIGGLE」導入により、見る人に合わせたレポートを即時作成できるようになりました。様々な切り口での分析リクエストをいただいた際、以前は対応に少なくとも1日必要だったのですが、今は「DIGGLE」のレポート機能を活用し、その場で対応できるようになりました。その場で分析軸を変更し、多様な切り口で予実を可視化できることは、現場から経営層まで関係者全員の議論の活性化にも貢献しています。

分析が高度化したことは、予算策定の精度向上にも寄与しています。今までの予算策定では、まず何を見直すべきかを把握することに手間がかかっていたのですが、「DIGGLE」を導入することによって、何をどう見直すべきかがすぐに分かる状態となりました。

経営層や事業部からも良い反応をいただいています。以前は数値の理解に時間を取られ、質問がなかなか出なかったのですが、「DIGGLE」のPLレポート画面やBIツールで作成した月次の報告資料を見せると「追加でこんなものも見たい」といったご意見や様々な質問が出るようになりました。経営陣からも確認したい指標のリクエストをいただき、非常に興味を持ってみていただけていることを実感しています。

※DIGGLEでは、経営データエクスポート機能により、「DIGGLE」内の経営データをスムーズにBIツールへ取り込めます。経営データエクスポート機能の詳細はこちら:https://diggle.jp/news/update/20230125/

まだ運用が始まったばかりですが、これから挑戦したいことや実現したいビジョンがあれば教えてください。

草野:現場を巻き込んで見込更新を行い、着地見込の精度を上げていきたいです。DIGGLEが主催するセミナーで、事業部を巻き込んでリアルタイムな見込更新をされている事例を伺い、その風土を醸成することは簡単ではないと思いつつ、「DIGGLE」を導入してできる状態になっているため、地道に進めていきたいと考えています。

最初に取り組みたいのは、見込管理に価値があると思ってもらうことです。遠藤は以前から「システムは最初の印象が使われるかどうかを左右する」という話をしていて、「DIGGLE」も最初に社内に披露するタイミングをとても大事にした結果、多くの方に興味を持っていただくことができました。見込管理に関しても、最初に良い印象を持っていただくこと、継続したときの効果に期待していただくことを重視して展開したいと考えています。

特にホテルの責任者などは、担当物件がどれだけ利益を出しているのかは気になるポイントです。実際、課題に思っていてもどうしたらいいか分からないという話を以前から耳にしていました。そうした方々が担当物件の状況をより正確なデータの積み上げで見通せるようになると、主体的に課題を見つけたり、アクションを考えたりできるので、価値があると感じていただけるのではないかと思います。

デジタル推進部 河本 沙弥加氏

今後の期待

複数年度のシミュレーション機能と会計システムとのAPI連携に期待

最後に、プロダクトへのフィードバックや今後ご期待いただける点をお聞きかせください。

草野:現状の「DIGGLE」だと年単位での管理がベースになっているので、年度をまたいだ中長期の管理やシミュレーションがしやすくなると嬉しいです。今は積み上げ型での予算策定を行っていますが、ゆくゆくは目標とするKGIから逆算した計画策定を行えるようにしたいと考えています。

河本:会計システムとのAPI連携ができるようになると嬉しいです。CSVデータのダウンロード・アップロードがなくなる分、より業務効率化にもなりますし、セキュリティの向上にもつながると思います。

会計システムとのAPI連携は、2024年に開発予定なので、もう少々お待ちください。本日はありがとうございました!