「企業の意思決定を支える経企勉強会」レポート
ミーミルの開田氏、プレイドの大薮氏をゲストに「企業の意思決定を支える経企勉強会」を実施しました
企業が持続的に成長をしていくためには、経営計画やビジョンの策定が欠かせません。多くの企業でその役割を担うのが経営企画担当です。
DIGGLE株式会社は、数多くの事業投資・事業開発に関わったキャリアを持つ株式会社ミーミル Corporate Division Leaderの開田康志氏、株式会社プレイドの経営企画/ファイナンス担当として、同社の上場準備に取り組んだ大薮聡史氏を招き、経営企画担当者に向けた「企業の意思決定を支える経企勉強会」を開催しました。
予実管理インサイトでは、同勉強会でのパネルディスカッションの模様をダイジェストでお伝えします。
複数のツールを組み合わせてデータを可視化
企業の意思決定という非常に広いテーマですので、徐々に狭めていく形で一つずつお伺いできればと思います。
はじめに、その企業の意思決定を支えるという点においては、その基盤となるデータを可視化することが重要ではないでしょうか。どのように可視化できるバックオフィスの体制を作っていくか、全体のシステム構成とそれぞれに何のデータを持たせているかという点についてお伺いできたらと思います。
大薮:当社は基本的には1年契約を前提としたプロダクトを提供しており、いかに契約を継続、かつ新たに増やしていくかというビジネスモデルでビジネスを行なっています。そういったビジネスモデルの特殊性がある点を前提とした上で、お話をさせていただければと思います。
データ基盤についてはGoogleのBigQuery上にデータウェアハウスを構築しており、そこを起点にどうやってデータを入れていくかを全社として考えています。
また、営業が今どのぐらいの商談をすることができているのか、既存のお客さまの利用状態がどのようになっているのかといったデータは特に重要と考えています。たとえば、お客様の契約金額のデータだったりだとか、いつ契約が始まっていつ終わるのかなどのデータですね。これらはSalesforceで一元的にデータを管理しています。Salesforceはすごく柔軟性が高いというところが良いと思います。
少し特殊なデータとしては、当社はKARTEというCXプラットフォームを使っている会社ですので、お客様の情報、たとえばNPSなども重視しています。。ちなみにNPSは当社が運営するKARTEで簡単に取ることができますので、KARTEを使えば、専門の会社さまへ依頼するよりも安価にそして素早く実装することができます。
開田:弊社の場合は、オペレーションの中心にSalesforceがありまして、営業活動やクライアントとの契約、クライアントからの個別発注などの情報を全てSalesforceへ集約しています。その前段階、商談になる前のリード情報やリードナーチャリングなどはMarketoでやろうと今まさに取り組み始めたところです。さらにSalesforceの後工程に位置するシステムとしてマネーフォワードですね。契約や営業活動の結果を財務会計データとして集計するために使っています。
あとは事業計画作成や予実、マーケ分析など、細かい分析はGoogleスプレッドシートに吐き出してやっています。
大薮:プレイドでも事業計画はGoogleスプレッドシートで作成しています。事業計画に用いる会計データついては奉行クラウドから取得したものを使っていたり、リード対象企業の探索と分析にはユーザベースさんのFORCAS、を使っています。当社のKARTEはマーケティング領域のソフトウェアを提供しているため、積極的に自社のツールも利用しています。
複数のシステムを使っていこうとすると、システム間の連携も課題かと思います。Googleスプレッドシートを介してつなぐ、もしくはAPIで直接つなぎこむ、もしくはデータウェアハウスに全部のデータを集約するなどが考えられます。そのあたりどのようにやっておられますか。
大薮:基本的にはSalesforceがメインで、たとえばリードの情報などは基本的にはSalesforceに流し込んでいくような形です。SalesforceからGoogleスプレッドシートにデータを流し込み、分析をする形が多いです。
開田:MarketoとSalesforceに関しては自動連携です。Salesforceとマネーフォワード会計のところは、基本はSalesforceデータをそのまま流し込めるような状態が理想だと思うんですが、今の時点ではまだ完全にはできていないですね。
新たにシステムを導入する際の注意点は
そもそもこれからそういったシステムを導入しようという企業もいらしゃるかと思います。導入する際に気を付けたほうがいいことや苦労されたことなどがあれば教えてください。
大薮:当社はまだ社員200人ぐらいのスタートアップであるため、相対的に新しいシステム導入の難易度が低い組織だと思っているので、とにかく試してみることを非常に重視しています。
たとえばドキュメントのツールだと、DropboxPaperをずっと使っていましたが、「Notionのほうが使いやすいんじゃないか」と判断すれば、すぐにNotionに切り替える、といったこともチーム単位から変更するということもできますね。とにかく試してみることが重要かと思います。
あとは自分たちの失敗談でもあるのですが、柔軟性が低いシステムを導入すると、のちのち苦労するかもしれないという点はお伝えしておきたいですね。企業やビジネスが成長してきたときに柔軟性が低いシステムを使っていると、そこが負債になってビジネスを邪魔してしまうケースが出てくると思います。そういった面で、サービスを提供する企業の成長性、会社が目指したい姿と当社が目指す姿が異なっているかなどを見ています。
あとは、実際に使ってもらえないといけないので、リーダーの方としっかり握っていかないといけないと考えています。
開田:
やはり現状の業務やオペレーションに対する深い理解と、そこからくる課題とTo-Be、つまりどうしたいかをどれだけ明確に描けるかですね。すごく当たり前のことなんですけど、本当にこれを徹底できるかどうかがうまくいくかどうかを左右すると感じています。
経営企画担当から見た予実管理の重要性と難しさ
システムの導入などをしてデータを整備したあとは、そのデータをもとにどのように意思決定をしていくのか、どのようにPDCAを回していくのか、KPIでどうやって経営を管理していくのか、などが次のステップかと思います。
その意思決定を支える構成要素の一つとして予実管理があるかと思いますが、お二人が現在もしくは過去に携わった予実管理業務について教えていただけますでしょうか。
開田:現在はミーミル株式会社の予実管理をしています。今社員50人ぐらいで売上数億円という規模です。その前はSPEEDA事業の予実管理ですね、こちらは売上50億円ぐらい。
それ以前はもう前職になってしまうんですけど、海外の子会社や、投資していた東証一部上場企業の予実管理も見ていました。あとは大企業の中の一部署の予実管理も担当したことがあります。
大薮:プレイドは各事業部がそこまで大きいわけではないので、ファイナンスチームが全社的な予実管理をしています。
開田さんにお聞きします。さまざまな企業の予実管理を見てこられて、難しいと感じる部分や工夫していることなど、何か共通点があればお聞かせください。
開田:全てに共通しているところとなるとすごく地味な話になっちゃって申し訳ないんですけど、数字の定義を合わせるとか、データを効率的に収集したり可視化出来るようにすること、あとは計上方針を明確にし運用に落とすこととかですかね。計上ルールがブレていると、それだけで実績・見込が大きく変動することもありますからね。
あとは売上でもコストでも見込が変わるときにちゃんとタイムリーに、そこを把握できるような体制をちゃんと会社や組織の中で築いておくというのは、どの予実管理であっても変わらなかったと思います。企業の規模が大きいと全部のプロダクトや部署の解像度を上げるというのが難しいので、各部署や各セクションの中で信頼できる方と関係を築く方式を取っていました。
大薮さんも、プレイド様の予実管理で難しかった点や工夫している点、苦労した点などあれば、ぜひお聞かせください。
大薮:2020年の12月に上場しましたが、そこへ向かってかなり確度の高い計画を立てなければならなかったので非常に苦労しました。上場するときの予算は絶対に守らなければならないものでしたから、今見えている商談の状況から何から、営業担当全員に聞いて回ったりしました。先ほど開田さんの方も仰られたように、現場とのコミュニケーションはかなりやりました。案件の確度についてはデータで見るよりも人に聞いてニュアンスを汲み取ることは重要だと思います。
また、コミュニケーションは相手に応じてやり方を変えるのが非常に重要です。自分はポジティブな人間ですが、そうでない人とは数字に対する見方も変わってきますから。その人の特性を見ながら数字を固めていくようにしていました。
現場との信頼関係を築くコミュニケーションとは
開田さんは現場とのコミュニケーションで何か意識されていたことはありますか?
開田:3つあります。1つは何をやりたいのかを背景とセットで明確にする。かっこよく言うとビジョンですかね。これをしっかりとクリアにして、発信することですね。2つめが解像度を高めることですね。経営企画の人たちが大上段に構えて何か言うと、コンフリクトが生じる確率が上がってしまうので(笑)、現場の業務や意見も細部まで正確に理解すること。3つめが「自分たちでやる」「自分でやる」ことですね。「やってください」じゃなくて、最後は自分で向かっていく、やりますっていうスタンスのことが多いですね。そうすると、現場とのコミュニケーションでミスが起きるとか、コンフリクトが生じる可能性は減るかなと個人的な経験として思っています。
大薮:担当者との信頼感です。それがすべてだと思っています。また予実を立てている目的をはっきりさせる。企業として投資ポイントを決めて、企業が成長したときにどう新しい景色が見えるようになるかを地道に伝えていくことになると思います。
M&Aにおける意思決定のポイントは
昨今は国内のマーケットがシュリンクしていくような産業も多いと認識しています。そういった中で企業成長の手段として、海外を含めてM&Aの重要性が高まってきているように感じています。M&Aの検討ですとかPMIっていうのはまさしく経営企画の重要なミッションだと思います。開田さんはM&AやPMIのご経験も非常に豊富かと思いますので、これらの検討から実施までの流れなどを教えていただけますでしょうか。
開田:話のきっかけ、ソーシングのところは本当にいろんなパターンがあるかなと思います。経営層と事業部の二人三脚でそういったソーシング活動をされているところもあれば、経営層+経営企画+事業部みたいな、そういう座組のところも多いと思います。やはり経営者同士での会話とかアプローチから生まれるものが実際には多いかなという印象ですね。
話が始まるとノンバインディングのタームシートとか、場合によってはMOUとか、LOIとかいろんな呼び方がありますけど、そういったものを結ぶ。ここまで来れば、私の経験上だいたいは着地するというか、ディールは成立しますね。もちろん着地の仕方に幅はあると思うんですけど。
ただ、さきほどもPMIというワードが出ましたけど、当初描いていた計画をどう実現するかという意思決定の後工程がやっぱり多くの企業様が悩まれるポイントではないのかなと思います。
M&AやPMIをする上で意思決定のポイントになるところがあればお聞かせいただけますでしょうか?
開田:2つありまして、1つは同じビジョンや世界を目指せることを両者が確信しているのかというところがまず重要かと思います。少しでも違和感があればその原因を放置せず確かめに行くこと。2つめは、社内にコミットできる人材がいるかどうかですね。投資して終わりではなくて、投資後のPMIが大きな課題でたくさんの問題が必ずそこで起こりますので、それを社内できっちり対応・推進できる人材がいるかっていうところをご確認いただきたいです。相手先ではなくて自社内を確認していただくのがすごく重要かなと思っております。
以上、勉強会の内容をダイジェストでお届けしました。
経営企画は今回話題に出た内容以外にも、新規事業開発やグループ会社の管理、組織再編など、企業のステージに応じて非常に広い業務範囲を担うポジションです。これらのさまざまな施策を一貫性をもって進めていくために必要なのが、しっかりとしたデータ整備、そしてそれに基づいたビジョンの策定と予実管理です。
予実管理クラウドサービス「DIGGLE」は、予実管理業務の標準的なフローを提供し、着地点の差異分析が誰にでも簡単に行える経営管理ソリューションです。予実管理体制を整えたい企業のご担当者様はぜひご検討ください。
また、DIGGLE株式会社では毎月、予実管理業務に関するセミナーを開催しております。ぜひご参加ください。