財務変革。2020年のデジタル財務機能を築くには。
本ブログは「FP&A Trends」というサイトに掲載されているBelal El Shaf’ei(べラール・エル・シャフェイ)氏による「Finance Transformation. What it takes to build a Digital Finance Function for 2020?」という記事を翻訳したものです。Belal El Shaf’ei氏はFP&Aの専門家であり、13年以上も財務機能に関わるご経験をされています。
今財務部門で働く人に、データ入力、データの蓄積と検証、アカウントの調整、基本的な明細表やレポートの作成などの手動タスクにどれほどの時間を費やしているか尋ねてみてください。残念ながら、統計によると経理および財務チームの35%以上が、ERPシステムでの手動プロセスとデータ入力に50〜70%の時間を費やしています。
同時に、財務チーム以外の人に「経理/財務部門で働く人の仕事はなんだと思いますか?」と聞くと、「ERPシステムにデータを入力し、システムからカスタマイズされたレポートを作成しようとして複数のExcelシートで作業する人」が最も多い回答になります。
このギャップは多くの企業の財務チームの現状であり、最大の課題となっていますが、”財務変革”を通じて簡単に解決することができます。
財務変革とは何か。
通常、財務変革と聞いて頭に浮かぶ最も一般的な定義は自動化です。しかし実際には、この言葉は広義であり、各企業の状況によって異なります。
一般的に、財務変革とはテクノロジー、ビジネスプロセスの自動化、パフォーマンス管理、およびデータ分析の組み合わせであり、会社全体の目標や戦略を達成し、財務部門の価値向上に繋げることができます。
財務変革のステップ:
- まず会社の全体的な目標、ビジョン、および戦略に沿った財務部門の目標を定義します。
- 財務管理のプロセスの自動化に焦点を当てます。自動化は重要なステップになります!
- チームで相互に助け合える多様なスキルを持った財務チームを組成し、学習環境を整えます。
- Financial Planning&Analysisは、財務機能の中心であり、FP&Aにさらに焦点を合わせます。
- どのような役職でも効果的にコミュニケーションを取り、分析する文化を作ります。
- パフォーマンス管理システムまたはビジネスインテリジェンスツール(あるいはその両方)を構築します。
細かな財務変革の手順:
1.目的
会社のビジョンや戦略に繋がる目標に取り組むことで、財務担当者は自分が会社にとって重要であると感じ、会社の目標を達成する意欲を維持できます。残念ながら、多くの財務チームは、きれいな帳簿と記録を維持するためだけに働いていると考えがちですが、財務はどの企業においても意思決定支援と付加価値機能でなければなりません。
2.自動化と制御
・McKinsey&Companyの記事「Bots, algorithms, and the future of the finance function」によると、財務活動の42%は完全に自動化が可能で、すでに19%は高度に自動化されており、これらを合わせると財務活動の60%以上になります。また、一部の会計オペレーションを最大79%まで完全に自動化できるとも述べています。
・完全に自動化できる会計プロセスの例:
- Order To Cash(O2C)
- ペイツーペイ(P2P)
- Record To Report(R2R)および標準の財務報告パッケージ
・ERPシステムのセットアップと制御:
- 自動化プロセスで最も重要なステップの1つは、システムのセットアップと実装を正しく行うことです。 適切なセットアップが適切な入力に繋がり、そして出力の適切な自動化に繋がります。
- ERPシステムのセットアップは、RMS(Revenue Management System)やSalesForceなどの他のサポートシステムと完全に統合されている必要があります。
- セットアップする際に、ビジネスの拡大に伴う大きな変更や再実装を避けるため、柔軟性を考慮する必要があります。
- データ入力ミスのリスクを回避するために、システム上に財務管理ツールを構築します。
- ERPレポートツールやExcelマクロとVBAを通して、すべての財務報告基準を自動化します。
経理サイクル全体の自動化と制御のプロセスを完了させると、経理チームに隙間時間や、余分な人手がいることに気付くかもしれません。但し、すぐに一時解雇してはいけません。財務共同経営者やビジネスアナリストになるための教育を行いましょう。
3.チームの多様性/学習と開発
簡単に言ってしまえば、「多様性は経験を生む」ことになります。財務チームを多様化させると、会社や個人が良い状態を保つことができます。チームワークを促進し、財務部門内でサブ機能の過剰作成を避け、目標達成のためチームを上手く融合させましょう。
学習と開発:財務チームのスキルセットは、技術の絶え間ない革新により変化してきました。最新の技術を利用し、競争が激化している市場で勝ち残るには、財務チームが成長マインドセットを持つ必要があります。昨今はオンライン学習チャネルによって、学習と開発のプロセスが非常に簡単になってきています。
4.ファイナンシャルプランニングと分析
ビジネスの規模に関わらず、強力なFP&A機能がなければビジネスが難航するでしょう。そこでファイナンシャルプランニングが重要なポイントになってきます。売上とキャッシュフローの計画が次の年、もっと言えば数ヶ月存在しない状態を想像してみてください。
「”If you don’t know where you’re going, then any road will take you there”」-ルイス・キャロル。
5.コミュニケーションと文化
強力な財務部門を構築するための機能を持っていたとしても、適切なコミュニケーションと文化がなければ、意味がありません。財務部門外でも適切なコミュニケーションがあれば、付加価値のある財務部門に変えることができます。営業およびマーケティング担当者と会話をし、彼らのニーズを汲み取り、いくつかの識見を与え、営業やマーケティング担当であっても財務部門の目標達成に貢献できることを伝えてみてください。
文化とは、組織構造の多くの層を含む大変大きなトピックであり、通常、トップマネジメントから始まります。ですが、財務の観点から言えば、財務チームがデータと分析に依存する社内の分析文化の構築に成功した場合、データ主導の意思決定をする会社を作り、上級管理職のテーブルで継続的に財務の席を確保できるでしょう。
6.企業業績管理(CPM)またはビジネスインテリジェンス(BI)、あるいはその両方?
ビジネスパフォーマンス(BPM)またはエンタープライズパフォーマンス(EPM)と呼ばれることもあるコーポレートパフォーマンスマネジメント(CPM)は、KPIを通して全社的な目標に対する進捗状況を可視化する役割を持ちます。
BIは、KPIを測定するだけでなく、データの裏にある流れを説明する視覚化レポートを作成することができ、財務機能におけるリアルタイムデータ分析を活用したゲームチェンジャーになるでしょう。 また、BIは機械学習テクノロジーを利用したいくつかの予測モデルとアドインを使用し、予測プロセスで重要な役割を果たすこともできます。
・CPMとBI、またはその両方のどれを実装するかの意思決定は、データとパフォーマンス管理ソフトウェアに投資する企業の能力に左右され、ビジネスニーズと企業が属する業界にも関係します。現在、BIツールの傾向が強まっていますが、大規模な組織では、CPMシステムの利用も依然として好まれています。
結論
財務機能は過去2年間で大きく変化しましたが、今後数年間でさらに劇的に変化し、自動化は会計の専門家の多くの仕事を補うようになるでしょう。
財務チームは、競争の激しい市場で生き残るために、より一層財務の新しいテクノロジーとスキルセット(「戦略、事業計画と分析、データ分析と視覚化、財務モデリングと評価、ビジネスプロセスの自動化」など)に注力する必要があります。