営業C/F150億構想を支える経営管理基盤。建設業の収益リスクをB/S・P/Lで一元管理
導入の背景
- 「工事進行基準 」のプロジェクトを見積会計だけで収益管理することに限界を感じていた
- 取得したキャッシュフローの使い道を判断するうえで、P/LだけでなくB/Sまで含めたトータルでの予実管理が必要だった
- 当時利用していたERPシステムの運用が属人化しており、差異分析に時間がかかっていた
選定理由
- B/SとP/Lでの収益性の管理・分析が行える
- 「中期経営計画の実現」という目標に対して、「まずは何から始めるべきなのか」等の棚卸しから伴走してもらえた支援体制
導入効果
- 「工事進行基準 」のプロジェクト管理も含めて月次決算ができるようになった
- 全社の予実を月次で突合できるようになり、差異分析にかかっていた時間も6分の1へ短縮された
- セグメント別/プロジェクト別での収益状況をB/S科目含めて見込管理・業績予測できる体制が整った
- 経営戦略部門・経理部門・営業部門・技術部門とで目線合わせができ、利益を生み出すための議論が進められるようになった
株式会社ヤマウラは、長野県を拠点とする総合建設会社です。地方ゼネコンとして、建設事業に加え、エンジニアリング事業や開発事業を展開しており、設計から施工まで一気通貫で手掛ける体制を強みとしています。また、水力発電をはじめとするエネルギー事業にも取り組んでいます。同社では、中期経営計画に基づく成長投資に注力しており、直近では次世代型データセンター事業に関する業務提携も発表しています。
こうした企業価値向上に向けた取り組みを支える経営管理基盤として「Diggle(ディグル)」を活用いただいています。この記事では、建設業特有の課題やDiggle導入の背景、導入後の変化について、経営管理部鎌田部長と横山主任、片桐さん(以下、敬称略)にお話を伺いました。
導入背景
収益リスクが見えず、資金計画を練りづらかった
まずは御社の事業内容について教えてください。
片桐:当社は地方ゼネコンとして、建設事業を中心に事業を展開しており、設計から施工までを一気通貫で手掛けられる体制を持っています。
特徴的な点でいうと、建設会社でありながら工場を持っており、産業機械や工場生産設備などの製品を自社開発するエンジニアリング事業を手掛けていたり、食品工場/クリニック/介護施設/オフィス/住宅など、用途別にブランド化を行い、新規顧客獲得の入り口を幅広く展開しています。
鎌田:エネルギー事業にも取り組んでいて、長野県内中心に水力発電所にも数多く携わっているほか、自社で水力発電所も保有しています。
大手ゼネコンが商社化を進めるなか、当社は地域に根差したゼネコンとして地域社会への貢献を目指しています。
横山:また、当社は「中期経営計画2025」のなかで、2030年3月までに営業キャッシュフロー150億円を創出し、成長投資と株主還元を実施することを宣言しています。そして、それを実現するための手段として、ストックビジネスを構築するCRE戦略事業(データセンターなど)、PFI/PPPと呼ばれる官民連携事業、工業団地開発、宿泊交流施設の運営事業など、幅広い新規事業を同時並行で推進しています。

収益モデルの異なる複数の事業を展開するなかで、経営管理の面ではどのような課題がありましたか。
横山:当社では、建設・土木・エンジニアリング・不動産開発といった事業がそれぞれ独立していますが、中には相互に連携しながら社内で受発注が発生する構造になります。そのため、各セグメントをきれいに分けて見ることが難しいケースもあります。
ただでさえ「工事進行基準 」と「工事完成基準」の混在で収益リスクが見えづらく、社内受発注をしていると1案件が会社へもたらす収益リスクの影響度合いが大きくなります。それに加えて、昨今の建設業や製造業では、現場の人材不足や資材価格の高騰が続いていて、収益コントロールの難易度は上がっています。
そうした状況下なので、社内では「中期経営計画で掲げた目標を本当に達成できるのか……」という議論がありました。 当社は「管理会計」で収益を見ていますが、長期にわたる各プロジェクトの進捗を見通す読みの精度や外部要因での工事原価変動など、不確実要素が非常に多いので、セグメント別/プロジェクト別などの切り口で、こまめに最新の予実を突合しながら収益リスクを把握できないことが課題でした。
「こうした課題は、建設業界全体に共通するものなのでしょうか。
鎌田:はい、中堅の建設会社はどこも抱えている課題だと思います。企画・設計から資材調達、製造、建設と一気通貫で事業を進めるということは、その分、管理の難易度やリスクも高くなります。
例えば、施工のみを担う場合であれば設計上の不備が発生した際に設計会社へ対応を求めることができますが、設計から施工までを自社で担う場合はすべて自社の責任になりますし、かかる追加コストも当然に自己負担です。工事原価がふくらみ、採算性が悪化するという事態になります。
こうした収益リスクに対して、どんぶり会計をしているが故に「蓋を開けてみるまでわからない」というケースは多いです。
横山:当社は創出した営業キャッシュフローを成長投資や株主還元へ回していくことを約束しているため、各プロジェクトの進捗数字や収益リスクの実態を把握していかなければなりません。
そのためには、P/LだけでなくB/Sまで含めたトータルでの予実管理が求められていました。
ただ、Diggle導入前に利用していたERPシステムだと担当者が限られており、予実の突合や差異分析をすぐに行うことが難しい状況でした。ERP担当者が多忙で差異分析の完了に数ヶ月を要したこともありました。 経営判断の遅れも深刻な課題としてあり、予実管理システムの検討を始めました。
選定理由
「工事進行基準」案件の収益性をB/S・P/Lで一元管理していける手応え
導入にあたっては他社サービスも検討されたと思います。その中で「Diggle」をお選びいただいた理由は何だったのでしょうか。
横山:3社のサービスを比較検討しましたが、一番大きかったのは、打合せの進め方の違いでした。他社サービスは、システム上で既に出来上がった枠組みに対して私たちの考えや運用を“合わせにいく”という印象を受けたのですが、Diggleの打合せでは私たちの考えに合わせてご提案を頂いてました。「現場部門と一緒に予実管理していく」というDiggleの思想は伝えていただきつつも、「中期経営計画の実現」という私たちの目標に対して「いま何が分かっていない状況なのか」「まずは何から始めるべきなのか」ということから一緒に棚卸し整理していただきました。
もちろん、大前提として機能面での要件を満たしていたこともありますが、担当者の方のそうしたプロセスが私たちに合っていました。

鎌田:工事進行基準の案件をB/S・P/Lで一元管理できるようになり収益性分析がしやすくなる、という点だけでも期待に応えてくれてましたが、真摯な提案を受けながら一緒に構築していける手応えを感じたこともDiggle導入の決め手となりました。
活用効果
収益リスクが見える化し、成長投資を加速できる基盤が整った
実際に活用するなかで、どのような変化がありましたか。
横山:工事進行基準と工事完成基準の案件を区別し、工事進行基準案件はDiggleの画面上でB/S・P/Lを一元管理できるようになりました。P/L科目の「売上」「売上原価」をB/S科目の「未成工事支出金」「未成工事受入金」などと対応させて同じ画面上で管理しています。
横山:月次で予実を突合し、これまで「開けてみるまで分からなかった」収益リスクをタイムリーに可視化・分析できるようになった変化は大きいです。差異分析のスピードについても、以前よりも大幅に短縮して行えるようになりました。経営管理部門のメンバーを中心に誰でも予実管理システムを触れられるようになっています。これからは、経営層・各事業部門のメンバーにも触ってもらう運用へ進めていく予定です。
鎌田:工事進行基準の案件も含めて月次決算ができるようになったので、現在は、そこで見える数字をどのようにKPI管理につなげていくかが次の論点ですね。 セグメント別/プロジェクト別での収益状況をB/S科目含めて見込管理・業績予測できるようになってくるので、成長戦略や資本政策を適切に実行していける土台がようやく整ってきたと感じています。
案件の収益性が見えるようになったことで、現場部門とのコミュニケーションに変化はありましたか
片桐: これまでは、会計システムから吸い上げた実績データ等をもとに経理が一方的に数字を出して終わりで、営業部門や技術部門と目線を合わせる仕組みはありませんでした。ただ今は「Diggleという一元管理するデータ基盤」を共通言語として、部門間でのコミュニケーションが生まれ始めています。

鎌田:また、上場企業として企業価値をどう高めていくのか、株価や資本政策をどう考えていくのかといった意識も高まってきました。私たちは経営管理の部門ですが、経営戦略の部門と一緒にM&Aや業務提携、エリア戦略をどう進めていくのかといった利益を生み出すための議論もできるようになってきています。
横山:もともと、当社には技術力や事業基盤といった素地はあり、中小企業から中堅企業へと成長してきた自覚はありましたが、その先の企業価値向上につなげるために「何をすべきなのか」が分からない状態でした。Diggleを導入し管理会計の在り方をゼロから組み立て直せたことで、進むべき方向性や論点が見えるようになってきました。中期経営計画の成長戦略をどう進めていくかといった議論を、確かな数字の手触り感を持って対話できるようになったことは大きな変化です。
今後の展望
今後、経営管理をどのように進めていきたいと考えているのか教えてください。
鎌田:性質の異なる複数事業の収益性を予実管理できる仕組みがようやく整ったので、今後は、掲げている中期経営計画のロードマップに沿って、収益リスクをコントロールしながらも成長投資の速度や確度をより高めていきたいですね。
本日はありがとうございました。