株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント|50名の担当者・1,000を超えるエクセルシートでの予算管理をシステムに移行

導入の背景

  • 1,000個を超えるエクセルシートで予算管理をしており、工数負荷を減らし経理責任者がエクセル作業にリソースを割かなければいけない状況を改善したかった。
  • 管理側からエクセルを配布するタイミングでしか各部での見込更新も行えず、頻度の高いアップデートができていなかった。
  • エクセルでの予実突合では、差異の原因を元データのエクセルやシステムまで遡らないと確認できず原因の特定が難しかった。

選定理由

  • 機能がシンプルで使いやすい。
  • ERPなど数ある中の一機能として管理会計/予実管理が入っているサービスと比べ、予実管理の課題解決に特化しており、特に課題の大きかった予実突合の課題を解消できた。

導入効果

  • 総勘定元帳をアップロードするだけで予実突合が完了するため、実績更新時のエクセル作業がゼロになった。
  • 変化があったときに各部が「DIGGLE」上ですぐに見込をアップデートできるようになり、各部内でも自部門の状況把握や分析に活用できるようになった。
  • 「DIGGLE」上で差異要因の特定ができ、期ズレの発生などもスムーズに把握できるようになった。各部門の責任者も自身で予実の差異や要因をドリルダウンで細かく確認できるようになった。

株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント(略称:TCD)は、用品、特装、モータースポーツ事業という3つの事業領域を展開するグローバル企業です。

この記事では、同社が予実管理クラウド「DIGGLE」を採用するまでの経緯や導入後の効果などについて、経営管理部 経理室 室長の出井さん、経理室の古畑さんにお話を伺いました。

導入背景|膨大なエクセルシートを使った予算管理が限界に。精度の高い管理とリソースの最適化、どちらも叶えるべくシステム化を検討

まず事業や、お二人のご経歴、現在の業務領域などについて教えてください。

出井:経営管理部 経理室 室長の出井です。当社は用品、特装、モータースポーツ事業という3つを中心に事業を展開しています。具体的には、トヨタのカスタマイズブランド「MODELLISTA(モデリスタ)」をはじめとしたモビリティパーツの開発・販売や、救急車を代表とするトヨタの特装車両やレーシングカーの設計から製造までを手掛けている会社です。

私は、15年ほど営業をした後、海外子会社立ち上げのリーダーをしました。その際にフィージビリティスタディ(※1)や連結管理なども経験しました。その後、経理に異動になり、現在は経理事務の責任者を務めています。私はキャリアの半分が事業部門におりましたので、業務としては予実管理/予算管理、原価計算などに比重を置いて担当しています。

古畑:経理室の古畑です。新卒で経理に配属され、現在6年目です。経理は3つのグループに分かれており、私が所属している第一グループは財務諸表の責任部署として固定資産や仕訳の計上をはじめ経理業務全般を幅広く担当しています。予実管理体制を変えていくプロジェクトには初期段階から携わっており、「DIGGLE」も導入から出井と二人三脚で進めています。

※1:フィージビリティスタディとは、新規事業・プロジェクトなどの開始前に採算性や実行可能性などの調査・検討を行うこと。

「DIGGLE」導入前は、単年度の予算策定はどのように行われていましたか?

出井:予算策定は縦軸が勘定科目、横軸が月になっているエクセルのフォーマットを組織の数だけ用意し、部合計、本部合計、全社合計といったように各階層のファイルも作っておいて各担当者に記入してもらっていました。また、システム管理をしている部署などはさらにワンランク下のシートをもって、契約別で明細が入力されていてその小計が勘定科目に反映されるといった形までエクセルを作り込んでいました。

管理粒度の部門の数としては最小単位で150グループぐらいが常にあり、全体でエクセルのブックが100個、さらに各ブックでシートが10個ほどあったので、管理シートとしては100×10で1,000個と膨大な量でした。

合算する都合もありフォーマットは完全に統一していましたし、グループ長はその機能のヒト・モノ・カネの管理を行う責任を負っているので、部署によって多少粒度にばらつきはありましたが前年度実績を加味しつつ、会社として重点科目にしている開発費などは特に案件別に積み上げて予算を立てようという掛け声をかけて、予算策定はけっこう精緻に行っていました。

ーそこまで精緻にエクセルを組まれていると、予算の見直しなども相当重たい作業になると想像できます。特に大きな課題として感じられていたことはなんでしょうか?

出井:期初の予算策定時は経営層や各部の意見をすり合わせていくのに何度も修正が発生するので、細かく予算をたてている分、その度に集計する側も策定側もけっこうな手間がかかっていました。私は中継する立場として気持ち的にも大変でしたね。

また、会社として決算見込に高い精度が求められています。期初には去年との変化理由が説明できるなどしっかり裏付けされた精緻な予算を出すのはもちろん、中間見直しで着地の見込を精度高く出し、第3四半期の連結報告のタイミングでもう一度精度を上げていくといった工程を行っています。

そうした精緻な管理を行っていくにあたって、去年との変化理由を説明するための明細行が膨大になっていき、エクセルでの管理には限界を感じていました。

特に、親会社から高い精度が求められる第3四半期の予算修正/見込更新のタイミングで、事業部に精緻な見込更新を求めるには、予算シートの過ぎた月は実績に置き換えたものを作成して渡す必要がありました。そのため、会計システムから実績を落として予算エクセルに戻す作業は毎回本当に苦労していました。

先ほどの明細粒度ではなく各グループでの集計の粒度までは、個人の能力を頼って作ってもらってなんとかやっていましたが、ソフトウェアのアップデートでエクセルが動かなくなったり作成者の異動で誰も更新できなくなったりするなど属人化の課題も発生し、大変な状況でした。

システム導入を検討するきっかけは何でしたか?

出井:私が予算策定や予算修正のタイミングなどではエクセル作業におよそ5割もの稼働を持っていかれていたことで、経理責任者がこうした「作業」に多くのリソースを割かなければならない状況を経営層も大きな課題と捉え、全社としてDXに取り組むことになりました。

経営管理部 経理室 室長 出井氏

選定理由|機能がシンプルで予実管理に特化。予実突合の課題ニーズにマッチした

「DIGGLE」をご採用いただいた理由や決め手を教えてください。

古畑:機能がシンプルでよかったというのは大きな理由です。当時、管理会計以外のさまざまな機能も複合されている海外システムなども候補にありましたが、一から構築するのが相当難しそうかつ金額的にもハードルが高かったです。「DIGGLE」は予実管理に特化していてシンプルで使いやすいと感じました。

出井:システム担当者と一緒に選定したのですが、いくつかサービスがある中で他のものは予実管理が付属品という感じでしたが、「DIGGLE」は予実管理に特化している点がよいと感じました。

古畑:当社がコストをかけてでも解決したい課題が特に予実突合だったので、「DIGGLE」が一番その課題を解決できそうだと感じました。

活用効果|予実突合の工数がほぼゼロに。各部での精緻な分析や見込更新も実現した

大きな課題だったエクセル作業の工数削減は実現できましたか?「DIGGLE」導入で大きく変化した点、効果として感じられていることを教えてください。

出井:総勘定元帳をアップロードするだけで予実突合が完了するので、実績の更新作業はほぼゼロになり、見込の更新などは圧倒的に楽になりました。今は、各部門に「DIGGLE」への見込入力をお願いするだけで、こちらでする作業はほとんどありません。

また計上時期の月ずれはよく起こりがちなことだと思うのですが、これまでは細かい粒度での予実突合が難しかったので、損益計算書(PL)上計画対比で純減に見えてしまうことがありました。そうすると着地見込が大幅にズレてしまう危険があると思うのですが、「DIGGLE」だと予算内容単位で突合が瞬時にできて、差異の理由をすぐに見にいけるので月ずれの把握も正確にできるようになりました。

古畑:以前は専用のマクロで入力していたので、差異が出たら元データのエクセルやシステムまでけっこう遡って確認しないとといけなかったのですがそれも全くなくなりました。

御社は組織の数も多く、事業部門側で50名以上と多くの方が予算策定/見込更新など予実管理に関わっていらっしゃいますが、事業部の方はどのように「DIGGLE」を利用いただいていますか?ツールがエクセルから「DIGGLE」に変わったことによる変化なども教えてください。

古畑:予算策定の際など、一気に更新したい場合はエクセルで更新して「DIGGLE」にアップロードしたり、細かい都度の更新は画面上で直接入力したりと、各部門や担当者がそれぞれマッチする方法を見つけて活用しています。部門別で明細シートをダウンロードできるので、各部でのエクセルでの更新もやりやすくて便利です。

出井:導入当時は、直接入力で数値を更新した際の反映スピードが少し遅いなと感じていたのですが、今はアップデートされて直接入力でもサクサク動くようになりましたよね。前より使いやすくなりました。

メインツールがエクセルから変わったことで、部門のメンバーがどのような更新をしたのかを各部門の責任者も「DIGGLE」上で確認できるようになり、部署内ではただ管理部門に報告するためだけでなく、「DIGGLE」を自部門の状況を確認するツールとしても活用できています。また「P/L分析」画面は勘定科目から細かい予算内容までドリルダウンで分析ができるので、差異が大きい項目や部署などを把握するのに各部門の責任者自身もよく見ています。エクセルだとできなかったことですが、今では細かいデータまで自分で辿ってもらえるようになったので、かなり役に立っています。プルダウンで昇順/降順などができるのも細かいですが便利です。

また、以前は管理側からエクセルを配布するタイミングでしか部署内での見込更新もできなかったのですが、今は「DIGGLE」を開けば常に情報を更新できる環境になりました。変化があったときに各部がすぐに更新できるので、部門で日々の変化を常時アップデートできるようになりました。

触れる機会が少ないと計画や数値に対する意識を持つことは難しいと思うのですが、常に各部でも状況をアップデートできるようになったとのことですね。
一方、関与者が多いからこそ、ツール変更で事業部の方に展開する際に苦労もあったのではないかと思います。新しいツールを定着させる上での工夫などあれば教えてください。

出井:まずは実績を「DIGGLE」で公開するので慣れて欲しいという期間を設けました。慣れてきたところで、「DIGGLE」に見込を入れるというステップを踏んだので、そんなに抵抗なくエクセルから「DIGGLE」に切り替えられたと思っています。実績を「DIGGLE」に入れることで、ドリルダウンで予実差異の要因を突き止められるなどを見せて、先に便利だと分かってもらったことも無理なく切り替えられた要因だと思います。展開時には取りまとめ担当を中心に説明会も複数開催し、出れなかった人には個別に説明をして回るなど、開始時は丁寧に行いました。説明会の準備では、「DIGGLE」のカスタマーサクセス担当者にも資料などの面でサポートしていただきました。

古畑:「DIGGLE」の担当者とは電話で話すことも多いのですが、定期的にミーティングの時間も設けてもらい、いろいろとサポートしていただきいつも助かっています。

経営管理部 経理室 第1経理グループ 古畑氏

今後の期待|会計システムと同じ組織コードや科目コードを「DIGGLE」上でも持てると嬉しい

最後に、プロダクトへのフィードバックや今後ご期待いただける点をお聞きかせください。

出井:勘定科目と組織については名称でわかりやすく管理できるようになっているのですが、それとは別に「DIGGLE」から出力した際に会計システムと照合するのに便利なコードでも管理できるようになると使い勝手がよくなると思います。

古畑:弊社の会計システムは科目コードや部署コードがついているので、これも「DIGGLE」で管理できると突き合わせがやりやすくなるので嬉しいです。現状、「DIGGLE」への取り込みの際は組織コードで突合できるので、出力の際も活用できるようになると便利ですね。

本日はありがとうございました!