株式会社メディアジーン|魂のこもった予算運用を事業部が実施するように

導入の背景

  • 担当者1人に予実管理業務が集中しており、工数負荷が大きく属人化していた。
  • 事業部が主体的に予算策定・運用を行うこと、またそれにより着地見込を高頻度で精度高く更新することを目指した。
  • 「DIGGLE」の前に別のシステムを導入していたが、設定や操作が難しく、予実管理担当者以外はほとんど使わないシステムになってしまった。事業部を巻き込んで予実管理を行える新しいシステムの導入を検討した。

導入による効果

  • 大きな工数負荷がかかっていた予実突合やバージョン管理などが「DIGGLE」上で簡単にできるようになった。また「事業部別」「収益区分別」などさまざまな切り口でのレポート作成を瞬時に行えるなど、経営分析をこれまでより高度かつ迅速に実施できるようになった。
  • 各事業部が主体的に予算を作成・見込更新をするなど、予算運用意識が大きく向上した。予算策定ではKPIや計算式の活用により、各事業部のKPIの可視化が行われつつある。
  • 経営層個々人が「DIGGLE」上で経営数値の確認、深堀りが可能となった。それにより経営会議の資料作成を省略して、本質的な議論により時間をかけて取り組むことにした。
  • カスタマーサクセスによる導入・運用サポートが手厚く、自社に定着するまで粘り強いサポートがあった結果、イメージ通りの運用を構築できた。

今後の活用展望

  • 予算の構成要素や差異が発生した箇所・その理由などが可視化されたため、今後PDCAを回しながらより予算・見込の精度を高めていきたい。
  • 着地見込の高頻度での更新により、投資効果のイメージをもてるようになったことで、今後注力していきたいと考えているM&Aの検討も円滑に進むことが期待できる。

経済メディア『Business Insider Japan』やテクノロジー情報メディア『ギズモード・ジャパン』を運営する株式会社メディアジーンでは、予実管理に「DIGGLE」をご利用いただいています。

この記事では、同社が予実管理クラウド「DIGGLE」を採用するまでの経緯や導入後の効果などについて、メディアジーン・インフォバーングループの取締役CFO・経営管理部門長で公認会計士でもある寺尾 洋之さんにお話を伺いました。また同社が2023年5月に台湾のメディア企業The News Lens(TNL)と経営統合し設立された「TNLメディアジーン」のNASDAQ上場や、今後の注力領域とされているM&A施策についてもお伺いしました。

導入背景

1人の担当者に予実管理業務が集中。事業部が予算を自分ごと化できていなかった

「DIGGLE」導入前は、どのように予実管理をされていましたか?

寺尾:グループ企業3社分の予算・実績管理について専任担当者を1人置いて、エクセルを使って管理していました。

当時は事業部との予算・実績に関するコミュニケーションはメールで行っていました。過去のメールを見返してみたところ、各現場担当者宛に予算案の提出依頼や、予算・実績の差異理由を質問するメールがたくさんあったのですが、現場からはなかなか返信がありませんでした。担当者がなんとか各部とやりとりして予算をつくっているような形で、現場を巻き込むことに大変苦労していました。

そうしたことを繰り返しているうちに、だんだんと「予実管理担当者が作った予算」になっていき、事業部の魂が入ってない予算になっていました。そのため、予算と実績がズレた時にその理由をたずねても、現場はわからない。事業部からは、管理部門で扱っている数字は「我々にとってはただの数字の羅列だ」と言われたこともありました。

代表からは毎月見込数字を更新していくことを求められていたのですが、勘定科目程度の粒度でしか予実突合をできていなかったので、予想が立てられない。見込といっても、実績に残りの計画分を足したものが今の見込ですという状態になってしまっていました。

以前は別の予実管理システムをご利用されていたとうかがっていますが、そちらのシステムはどのように活用されていましたか?またリプレイスを考えた理由を教えてください。

寺尾:予実管理担当者が「エクセルでの管理は大変だからシステムを入れたい」ということで、外資系の予実管理システムを入れたことがありました。ただそれは予実管理担当以外の社員からは全く使われず、担当者の「エクセルの代わり」くらいの使い方にしかなりませんでした。そもそも最初の設定や操作が難しく、現場が使いやすいようにカスタマイズを行うことは自分達だけではできなかったです。

予実管理に事業部の方達を巻き込むことを目指して、システムのリプレイスを考えられたのですね。

寺尾:はい、事業部が主体者として予算を作って運用していけるようにすることが、一番実現したかったことでした。現場が使いやすい、彼らを巻き込んで使えるシステムを探しました。

取締役CFO 経営管理部門長 寺尾 洋之氏

導入効果

事業部が主体的に予算策定、見込更新を実施。予算運用に対する意識が大きく向上

「DIGGLE」導入後、どのように予実管理を行なっていますか?事業部に展開するにあたって工夫したことや、事業部のアクションの変化などがあれば教えてください。

寺尾:まずはとにかく見込の更新を徹底してもらうようにしました。「計画・見込の運用責任者はあなたです」「計画が変わるときは、必ず更新をしてください」というコミュニケーションを粘り強く行っています。また予算の運用責任者として、各事業部の担当者には代表と直接コミュニケーションもしてもらうようにしました。

見込の更新方法としては、「DIGGLE」に直接数値を入力してもらっています。以前は「これまでエクセルを使っていたから、数値の更新はエクセルで行って『DIGGLE』に取り込む方が良いのではないか」と思っていたのですが、カスタマーサクセス担当者の方から「事業部にタイムリーな見込更新を浸透させるなら、直接入力で1クリックで簡単に数値更新・反映ができる方が、忙しい中でも『あとでやろう』にならないと思います。運用を変える負荷はあるかもしれませんが、長期的な視点で見るとオススメです。」と強くご提案いただき推進してきました。結果的に事業部にも運用が浸透してきたので、運用を変えてよかったと感じています。

また予算策定の前には、各事業部の担当者に向けて具体的な作成方法・コツなどの講義をしています。「DIGGLE」ではKPI(非財務指標)の登録と、予算の算出に計算式の活用ができるので、今期からは一部予算項目の構成ロジックを計算式で設定してもらうようにしました。例えば、「全体売上 × 予測構成比率 = 媒体Aの売上」「媒体A売上高 × レベニューシェア料率(※1) = 支払報酬費用」などです。これにより事業部のKPIが可視化されて、事業部と管理部との連携もより行いやすくなりました。

現場では、「予算は自分たちが作るものだ」「予算に対する行動の結果が実績だ」ということが少しずつ浸透してきました。だんだんと現場の魂が入った予算や見込になってきており、導入前の意識と比較すると雲泥の差を感じます。

※1レベニューシェアとは、複数の企業間で共同で事業を行い、得た収益を一定の比率で分配すること。

経営層の方の活用や反応はいかがですか?経営会議などでは「DIGGLE」をご活用いただいているでしょうか。

寺尾:経営会議のために資料の用意などはせず、経営陣にも「DIGGLE」を直接見てもらうようにしています。以前は会議資料を都度作成していたのですが、今は全ての数値が「DIGGLE」に入っているので、気になる項目などがあれば「DIGGLE」上で細かい数値まで深掘りして各々で見てもらうようにしています。これにより、形式的な資料作成にかけていた時間を、もっと本質的な議論にあてられるようになりました。

その他、「DIGGLE」の機能で気に入っている/使いやすいところなどはありますか?

寺尾:いろいろな切り口ですぐにレポートを出せるのがいいです。エクセルで管理をしていたときは、会議で「こんな切り口の数値が見たい」といった新たなリクエストが出ても、「この場ではすぐに出せないので、回答に時間をください」となりがちでお互いにストレスが溜まることがありましたが、、今は「DIGGLE」のレポート画面で分析軸を選ぶだけですぐにデータが出せるようになりました。

当社では各部門が 複数の収益区分をもっています。部門別、収益区分別でそれぞれ損益を見ないといけないので、より「DIGGLE」を使う効果は高いと考えています。

また、これまでは大きな工数負荷がかかっていた予実突合やバージョン管理などが「DIGGLE」上で簡単にできるようになりました。分析もこれまでより高度にできるようになったことに加えて、「DIGGLE」は機能追加などが定期的にありこれからも進化していくわけですから、人を雇うコストや既存人員の工数を賄って余りあると思います。

あとは、リプレイスしたシステムとの大きな違いで言うと、「DIGGLE」は導入・運用のサポートが非常に手厚いと感じます。専任のカスタマーサクセス担当者の方と密に会話しながら初期設定などを一緒に進めていただいたおかげで、我々も「DIGGLE」をよく理解できました。今でも質問やリクエストなどがあればすぐに連絡をさせてもらっています。

活用展望

予実管理の精緻化がNASDAQ上場やM&Aの推進力に

昨年は台湾のメディア企業The News Lens(TNL)との経営統合と、NASDAQ上場という御社にとって大きなニュースがありました。NASDAQ上場に関して、「DIGGLE」が貢献できていることや、これから活用いただけそうなイメージはありますか?

寺尾:当社グループの場合SPACとの合併による上場ですが、上場準備としては、本質的な部分は直接上場の場合と変わらないと思います。予実の精度をより高めてSPAC社を含めたグループで共有し、上場後に投資家にきちんと説明できるような体制を構築することが必要です。

これから監査法人とも「DIGGLE」を見てコミュニケーションを取るようなケースも増えてくるように思います。「DIGGLE」の活用により、予算の構成要素や差異が発生した箇所・その理由などをすぐに説明できるようになったので、これから真摯にPDCAを回していけば予実の精度もより高めていけると考えています。

御社が力を入れていこうとされているM&Aや、投資施策への活用についてはいかがでしょうか?

寺尾:着地見込を頻度高く更新できるようになったので、投資効果のイメージを可視化できるという効果はあると思います。施策の検討・実施はこれからのフェーズにはなりますが、今後より多方面で活用していきたいです。

今後の期待

戻すボタンの追加やスナップショット機能の拡充に期待

最後に、プロダクトへのフィードバックや今後ご期待いただける点をお聞かせください。

寺尾:一つ前のアクションを元に戻すボタンがあるといいですね。ショートカットキーでいう「Ctrl+Z」です。直接数値の入力ができて更新がスムーズにできる分、戻す動作もより簡単にできると良いと思います。あとは数値の更新履歴はスナップショット(※2)で確認できるのですが、誰が更新したのかについても履歴で分かりやすく残るようになるとより良いと思います(※3)。

本日はありがとうございました!

※2:スナップショットとは、バージョンの記録、呼び出しをすぐに実行できる機能

※3: 「申請・承認機能(β版)」を使用すると、事業部側の担当者が予算案や追加予算・変更等の記入時に、必ず申請を必要とする運用が可能です(機能の詳細はこちら