施策粒度のタイムリーな差異分析で、利益をコントロール。キリンビールのマーケティングファイナンス
導入の背景
- 機動的な利益コントロールが求められる中、マーケティング投資の採算状況が不透明
だった - データ量が多すぎて、施策粒度でタイムリーな見込管理を行うことが難しかった
- ExcelとAccessによる予実管理業務が属人化していた
選定理由
- コストバランスが優れていた
- 従来のExcel運用との親和性が高く、社内でのハレーションリスクが低かった
導入効果
- 予実管理のマスターデータを標準化し、作業工数も約2.5営業日分を削減
- 分析基盤が整い、施策粒度でタイムリーな見込管理/差異分析を実現
- 不測の外部環境変化に対して、即座に費用投資をアロケーションできる管理体制の実現
麒麟麦酒株式会社は、キリンホールディングスグループの中において、ビールやウイスキー、ノンアルコール飲料、各種RTD飲料(開封後そのまますぐに飲めるアルコール飲料) を製造・販売している総合酒類メーカーです。同社では、マーケティング投資を支える予実管理基盤として「Diggle(ディグル)」をご活用いただいています。
本記事では、「数量至上主義」から「利益至上主義」への転換を進める中でDiggleを導入された背景や導入後の変化について、企画部 マーケティングファイナンス担当の槇島さんと筒井さん(以下、敬称略) にお話を伺いました。
導入背景
利益コントロールに、施策粒度でのタイムリーな見込管理/差異分析が必要だった
企画部 マーケティングファイナンス担当とは、どのような役割を担っているのでしょうか。
槇島:企画部は、会社全体の戦略立案や予算・実績の進捗管理を担う、いわゆる経営企画部にあたる部署です。その中で私たちは、マーケティング領域に特化したマーケティングファイナンスを担当しています。マーケティング部では、カテゴリー単位、その中でさらにブランド単位で責任者が分かれており、私たちはそんな複数のチーム担当者を横断しながら利益コントロールを図るファイナンス機能を担っています。
筒井:マーケティングファイナンスの役割は、各ブランドのマーケティング投資最適化を通じて、将来キャッシュフロー(C/F) ひいては企業価値の向上につなげることです。そのため、マーケティング活動ごとのROIを定量的に測定するとともに、ブランドごとの採算性を見ながら、原価やプロモーション投資なども踏まえて「最終的にどれだけ利益が残るのか」という利益見込みのモニタリングと各ブランド担当者への提言を行っています。
全社では、投資に対してどれだけ利益を生み出せているかを示すROICを重要な指標としていますが、現場の担当者にいきなりROICを意識してもらうのは難しいため、売上やマーケティング費用を現場指標へ分解し、事業・ブランド単位での利益コントロールを行なっています。

ブランドごとに利益を見ていくうえで、どのような粒度で予実管理されているのでしょうか。
筒井:予実管理は、ブランド単位だけでなく施策単位でも行っています。ブランドごとに店頭施策や価格対策、テレビ広告などさまざまな施策があり、ブランド別・施策別の両方の切り口で管理しています。基本は、マーケティング部の各ブランド担当者が予実を管理し、私たちがファイナンスの立場から着地見込や差異要因の確認、全社予実との突合を行う構図です。
マーケティング投資の予算策定においては、年間のマーケティング戦略を策定するタイミングでカテゴリーやブランドの責任者と同期し、1年間の施策計画と予算を細かく組み立てています。その後も状況に応じてブランド間や施策間のアロケーションを行いますが、私たちはマーケティング部からの提案をそのまま反映するのではなく、本当にそのブランドへ投資すべきか、中長期のブランド育成の観点も踏まえて定量的に評価し、ファイナンスの立場から助言しています。
槇島:管理対象となる施策数でいうと、1,000件ぐらいになります。もちろんすべての施策の計数をマイクロマネジメントするわけではなく、投資金額の多寡などに応じて焦点は絞って管理していますが。
管理対象を絞るとはいえ、すごい施策数ですね。各ブランドのマーケティング担当者の方々とは、どのくらいの頻度でコミュニケーションを取っているのでしょうか。
筒井:企画部と兼務でマーケティング部にも所属する形をとっているので、自然と日頃から対面での会話機会が多いですね。
槇島:これまであまり実施してこなかった施策や新しい取り組みがある場合は、採算性などの面で相談を受けることも多いです。マーケティング担当者は約30名いますが、同じ部内に所属しているおかげか、何かあれば早い段階で相談してもらえる距離感ですね。
30名ものマーケティング担当者さんと近い距離感で連携されていて、管理体制が仕上がっているようにも見えます。その中で「予実管理システム」導入を検討された背景を教えてください。
槇島:以前まで、社内では「数量至上主義」の考え方が重視される傾向があったのですが、現在は「利益至上主義」へのシフトを進めています。ただ、その先で大事なのは、利益も短期ではなく中長期で見ていくことです。短期の利益目標を達成することももちろん重要ですが、そこだけに傾倒するとブランド価値を毀損してしまう可能性もあります。単年度の視点だけではなく、中長期的なブランド価値・企業価値を見据えて将来C/Fを高めていくことが、私たちに求められていることです。
そしてその実現のためには、ブランド別・施策別での見込管理や差異分析をタイムリーに実施していく管理基盤が必要でした。
当時はExcelとAccessを組み合わせてマーケティング投資の費用を管理していたのですが、明細数が非常に多かったため、データの集計・整形にかなり時間がかかっていました。一度エラーが発生すると手戻りも大きく、そうした重い運用でタイムリーな見込管理を目指していけるわけもなく、予実管理の専用システムの導入検討を始めていきました。
また、Accessのメンテナンスは属人化しており、引き継いだ担当者しか対応できない状況も大きな課題として残っていたため、標準化できるシステムの必要性を感じていました。

筒井:情報の透明化という意味では、システムを導入して標準化することで、権限を持つ人が見たいときにすぐ情報を確認でき、経営層も必要なタイミングで自ら見に行けるようになります。そうした、社内でのアクセシビリティの向上も、導入検討を後押しした理由のひとつだったと認識しています。
槇島:そうですね、キリンビールの経営陣からも、マーケティング費用透明化の要望は以前からありました。キリンホールディングス全体から見ても、キリンビールは大きな事業であり、マーケティング費用も特段大きいため、透明性を高めていくことは重要な経営アジェンダの一つでした。
選定理由
従来のExcel運用との親和性に加え、コストバランスが決め手
「Diggle」のほかにも、他社システムや独自開発を含めて検討されたと思いますが、当時どのような観点で比較・検討されたのか教えてください。
槇島:「ブランド・施策単位でタイムリーな見込管理の運用ができるか」「メンテナンスや分析の面で属人化を解消できるか」等の点は当然にありつつ、その管理基盤を築くうえでの投資コストとのバランスは注視していましたね。その点、Diggleはコストバランスが一番優れていました。また、当時のExcel運用との親和性も高く、社内でのハレーションリスクが相対的に低かった点も評価ポイントでした。
導入効果
差異分析の高速化に加え、不測の事態へ即時対応できる管理体制に
実際に「Diggle」を導入・運用されてみて、現場からの反応や使い勝手はいかがですか。
筒井:Excelマスターのような一部のExcel手練れ社員からは「やっぱりExcelのほうがやりやすかった」という声も正直ありましたが、全社で標準化しガバナンスを効かせていく観点でいうとこれでよかったと思います。実際にはDiggleの運用に慣れてくると「Excelよりも速い」といった声も聞かれるようになりました。
槇島: 以前のExcel運用では、大量のデータを扱うと動作が重くなり固まってしまうこともありましたが、Diggleではそうしたトラブルがなく、大量のデータでもスムーズに扱えていますからね。また、導入時にカスタマーサクセス担当の方とマスターデータをしっかり設計できたことで、他の管理者視点でも構造が分かりやすく、Excelを読み解くよりも管理しやすくなったと感じています。
大量データの処理が速くなったことで、具体的にどのような変化がありましたか。
槇島: 実績データの取り込み作業は大幅に効率化されましたね。以前は、合計で3営業日ほどを要していたのですが、現在は1~2時間ほどで完了できるようになりました。少なくとも約2.5営業日分の工数を削減できています。
また、Excelの取り込み作業だけでなく、見たい粒度や角度ですぐに分析できるようになったことで、施策粒度の差異を特定してからブランド担当者へ確認するなど、現場担当者とのコミュニケーションがより円滑に進むようになりました。
筒井:分析したい内容に素早くたどり着けるようになったことに加えて、見込みや実績を踏まえて戦略の見直しや投資判断など、次のアクションへ向けたPDCAをより機動的に回せるようになったと感じています。

導入背景としてあった利益コントロールの面では、変化はありましたか。
筒井:利益の着地予測を見据えながら、市場環境の変化に応じてブランドごとの投資配分を柔軟に見直せるようになりましたね。ブランドごとの予算や施策を横並びで確認しながら、「どこに追加投資するのか」「どのように配分を見直すのか」といった判断をスムーズに行えるようになりました。
印象的だったエピソードとして、とあるマスメディアへの広告出稿を急遽取り止めなければいけない不測の事態が発生したことがあったのですが、Diggleでブランド別・媒体別の予算状況を即座に確認できたため、大きな苦労なくスムーズに予算のアロケーションを実行できました。
槇島:外部環境の変化で不測の事態が発生した際にも、機動的に利益コントロールに動けたことは、経営管理体制が強化されたといえる大きな成果だと感じています。
本日はありがとうございました。