予算と実績の粒度がそろい、現場から積み上げた予算の妥当性が見えるように

導入の背景

  • 柔軟な権限設定ができず、詳細な数値へ現場メンバーが自らアクセスできる環境を提供できていなかった
  • 詳細な数値へアクセスできないことから、現場で把握している数値と実績がたびたび整合せず、原因把握も難儀であった
  • 予算と実績の勘定科目粒度の齟齬により、容易に予実突合ができない現状は認識していたが、既存システムでは解決が困難であった
  • 最小粒度であるビル別収支の集計・配賦処理が煩雑で半期でしか現場へ還元できないことに加えて、集計作業が属人化していたため、解消できる方法を模索していた

選定理由

  • 経営層だけでなく、現場メンバーでも直感的に使えるUI
  • DIGGLE営業担当の的確な提案とデモ環境を触った時の手応え
  • DIGGLEという会社の企業理念や社会に対する姿勢

導入効果

  • 現場メンバーも自ら担当範囲の数値へアクセスできるようになった
  • 予実の勘定科目粒度が整い、ビルごとに積み上げて精微な予算策定や予実突合ができるようになったことで、予実対比を容易に把握できるようになった
  • 現場認識との数値齟齬原因が把握できるようになり、納得感のある計数管理が可能になった
  • 財務会計締め後の工数が大幅に削減され、属人化していた集計作業の煩雑さも解消した

東京不動産管理株式会社は、東京建物のグループ会社としてオフィスビルや商業施設などの総合的なビルメンテナンス事業を展開しています。

この記事では、予実管理クラウドサービス「DIGGLE」導入までの経緯や実際にどうご活用されているか、さらに今後のご期待について、同社経営企画部の櫻井 翼さん(以下、敬称略)にお話をお伺いしました。

導入背景

現場メンバーが容易に数値へアクセスできる環境が必要だった

最初に御社の事業と櫻井さんの業務内容についてご紹介をお願いします。

櫻井:東京不動産管理は東京建物のグループ会社で、オフィスビルを中心に総合的なビルメンテナンス事業を担っている企業です。

その中で私は経営企画部という部署に属しています。取締役会など各種会議体の運営や会社全体の予実管理のほか、社内外に情報を発信する広報としての役割も担っています。

「DIGGLE」導入前にはどのような課題を抱えていたのでしょうか。

櫻井:現場メンバーが自ら数値へアクセスできる環境が整っていない点が課題の一つでした。以前は基幹システムの管理会計機能を活用していたのですが、権限設定が柔軟にできず、明細粒度の情報へ自らアクセスする権限を現場へ提供できていませんでした。

そのため現場では発生した経費を積み上げて「このぐらい使っている」という管理はしていましたが、実績と突合すると数値が合わないというケースも頻発していました。

またビル別収支が半期に1度しか現場へ還元できない点も課題でした。当社のシステム階層の最も下が、管理ビルとなり、その上にそれらビルを統括するグループがある構成になっています。従来グループの粒度では、毎月予実資料を経営企画部から展開していたのですが、ビル別の予実資料は作業が煩雑で毎月還元できていませんでした。

しかも、ビル別収支は「どのビルに何%の工数を使った」というウエイトを各現場のメンバー一人ひとりが入力し、それが経営企画部に送られてきます。経営企画部ではその報告を元に人件費を配賦するのですが、この「何%の工数」というのも現場任せなので、担当者の気持ち一つで各ビルの収支が大きく変化してしまい、経営判断の指標にするには、あまりにも心許ない点が課題でした。

その「何%の工数」というのは時間単位で報告されていたのでしょうか。

櫻井:ベースは時間単位ですが、現場には数百人のメンバーがいるので、それが完全に徹底されていたかというと、必ずしもそうとは言い切れません。半月に一度の報告ということもあり、毎日丁寧に記録しているわけでもないので、かなりあやふやな数字を基準に人件費を配賦していたというのはありますね。

そのような状況の中で、システム導入を検討し始めた理由は何だったのでしょうか。

櫻井:理由は三点あります。一点目はコード設計の課題です。予算の勘定科目体系がざっくりで、実績の勘定科目と粒度が異なり、突合が困難な状況でした。課題は認識していたのですが既存システムは基幹システムであり、他システムにも影響を及ぼすので改修が困難でした。

二点目は権限設定です。前述の通り権限設定が柔軟にできず、各ビルの所長や統括するグループリーダーが、自らの担当範囲の数値ですら明細粒度で確認できない状況でした。

三点目はビル別収支の集計・配賦処理の煩雑さです。最小粒度であるビル別収支の集計・配賦処理が煩雑で半期でしか現場へ還元できないことに加えて、集計作業が属人化しており、作業を引き継ぐことが困難だったため、解消できる方法を模索していました。

選定理由

機能はもちろん、DIGGLEという会社の姿勢に惹かれた

導入するシステムに関しては、どのようにリサーチを進められましたか。

櫻井:まずは運用していた管理会計で改善できないかを考えました。ただ、当社の基幹システムとして稼働しているため、勘定科目の見直しやコード修正は、他のシステムにも影響が出てしまうので、断念しました。

そこで展示会やWeb検索で予実管理システムを提供している会社を探し、最終的にパッケージやSaaSといった異なる分野で四社ほどに絞り込みました。

選定にあたっては何か基準となるものがあったのでしょうか。

櫻井:やはりパッケージ型がよいという想いがありました。運用していた管理会計は、当社の要望に合わせて設計したようなのですが、運用していく中で複雑になり、運用が難しくなっていた苦い経験があるので、ある程度、汎用的に活用されているパッケージ型に当社の運用を合わせていくことを条件にしました。

また基幹システムから切り離されており干渉しない、つまり基幹システムを一切変更しなくても問題なく使えることも条件でした。

さらにUI、利用者が使いやすい、使ってみたいと思えるようなシステムであることを重視していました。やはり現場の所長やグループリーダーに使ってもらうことを目指していたので、経営層や経営企画部だけが使えるシステムではなく、開かれたシステムにしたいと思っていました。

その中で「DIGGLE」を選ばれた決め手は何だったのでしょうか。

櫻井:やはりUIですね。現場メンバーでも直感的に使いやすいUIだと感じました。また仮設定で構築していただいたときの手応えも決め手になりました。営業担当の方が「御社だとこのような課題もありそうですが、期待に応えられます」と話してくれた内容も的確で心強かったです。

また、これは個人的な意見なのですが、DIGGLEという会社の企業理念や社会への姿勢にも惹かれました。契約を結ぶ直前の2023年7月に色覚多様性に対応したロゴへリニューアルされており、このような社会的な意識を持ち、実行していく企業を選びたいと思いましたし、このような企業となら長く安心して付き合っていけると感じました。

活用効果

「数字が合わない」ことによる煩雑な作業が激減、工数の削減にも成功

「DIGGLE」導入後、業務フローはどのように変化しましたか。

櫻井:導入前の予算作成は勘定科目によって、最終粒度であるビル別に入力するものもあれば、その上位のグループ単位で入力するものと統一されていませんでした。現場の手元では、ビル別に積み上げて予算策定をしているところもあったと思いますが、数値集計はグループの括りでしか、把握できていませんでしたし、予算と実績の勘定科目粒度が異なり、詳細な予実突合が困難な状況にありました。

「DIGGLE」導入後は、最小粒度であるビル別に実績と同じ粒度で予算作成できる環境が整いましたので、それぞれのビルで「どのような作業が発生するか」「定期管理であれば何月にどのような契約変更がありそうだ」といったことを加味しながら予算はもちろん、見込にも反映できるようになりました。

現在はビルの所長にまで権限を付与しているので、所長が自身で入力することもあれば、その上のグループリーダーが取りまとめて入力することもあるといった、柔軟な形で運用をしています。

導入後の効果はいかがでしょうか。

櫻井:2024年の期中からプレ運用を開始して、2025年から既存の管理会計から「DIGGLE」へ完全に切り替えました。実績と同じ粒度で予算を立てて初めての運用になりますので、予実突合の中でどのような乖離や傾向が出てくるか期待しています。これによって予算の立て方の妥当性が見え、ピンポイントで改善できるようになったのは大きいですね。

現場の方々も数字を見ることができる環境が整いましたので、今までのように「数字が分からないから管理できない」といったことはなくなったと思います。

また月次の財務会計が締まってからの報告が早くなった点は経営層から好評です。今までは財務会計で締まった後に、分析結果を経営層に報告するまでに数週のタイムラグを要していたのですが、そのタイムラグがなくなったのは非常に大きな成果だと思います。

さらに今まであった「この数字が合わない」といった細々した作業が激減しました。これまではブラックボックスのようになっていたのが完全に解消され「おそらく財務会計の入力処理で間違った」「現場の担当者が入力箇所を間違えている」といった原因まで分かるようになりましたし、誤った部門や勘定に計上されても見つけるのが困難ということがなくなりました。ミスを完全に撲滅することは不可能ですが、現場も数字に容易にアクセスできるようになったことで相互チェックが働くようになり、何が原因か分からないような数値が存在しなくなったことは心理的にもよく、納得感のある計数管理に繋がっていくと感じています。

経営企画部の工数面で効果を感じることはありますか。

櫻井:今までは財務会計が締まった後、管理会計に落とすまで、どうしても数日要してしまうことも多かったのですが、現在は午前中に財務会計が締まれば午後には「DIGGLE」に反映できていますし、「月次レポート」機能を使って、簡単な差異分析の報告でしたら即日で経営層に展開でき、報告スピードも上がったことに加え、かなりの工数削減になっています。

また部署としてもメンバーが一人減っているのですが、今までのように「よく分からない数字」に悩むことがなくなったので、十分余裕を持って働ける環境になったと感じています。

今後の期待

さらに現場のメンバーが使いやすくなる運用方法を一緒に模索したい

今後DIGGLEに期待することがあればお聞かせください。

櫻井:現在は200弱のアカウントで運用しており、各管理ビルの責任者である所長という役職のメンバーに権限を付与しています。一方、当社の管理物件規模は大小さまざまで、利用頻度や見込修正はビルの規模によって異なることに加え、会社収支に与えるインパクトも違いますので、ビルの規模によっては権限がなくても数値を確認・共有できるような仕組みで運用することも検討していきたいと思っています。こういった運用面やより社内に広げていくためのプランなども一緒に模索していただけると助かりますね。

一方で、「DIGGLE」は現場の方々も使いやすいUIが魅力的で、経営層側も現場が自らPDCAを回せる環境を提供していきたいという思いがありますので、各現場の所長などが、自分自身で予実分析や見込の見直しなどをこまめに実施したくなるような、見込や予算策定をする側に寄り添った細かいアップデートには、今後も期待をしています。

「DIGGLE」は現場の方までコラボレーションして使っていただくことを大事に開発していますので、今後の改善に活かしていきたいと思います。本日はありがとうございました。