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サイバー・バズ元CFO和田氏を招き、「上場前後の予実管理のリアル」をテーマにセミナーを開催しました(後編)

当記事はセミナーレポートの後編となります。
前編はこちらから。

多くのスタートアップ企業にとって、大きな目標の1つであるIPO。実現のために重要なのが、上場前後での緻密な予実管理です。

この記事では、DIGGLE株式会社が先日開催した「上場前後の予実管理のリアル」をテーマにしたセミナーの内容をご紹介いたします。株式会社サイバー・バズの上場時のCFOで、ナハトムジーク株式会社代表取締役の和田瑞樹氏にお話を聞きました。

レポートの後編では、主に上場後の予実管理についてのお話をご紹介します。

上場前と上場後における予実管理の違い

実際に上場するタイミングでかなり予実管理をきちっと見られると思うんですけど、上場後の予実管理に関しては、何か変わるところがあったのか、もしくはそのときにしっかり体制を作ったので、基本的にはそのままきっちり回っていくようになったのかというところでいうと、どうでしょうか。

和田:私自身が上場後は一年しかやっていないという前提でお話しさせていただくのですが、やはり予実のブレみたいなところって、今まで以上にかなりセンシティブになります。

予算を作る時点で管理部門はどこにどの程度どこまでコントロールできる材料があるかを把握しておく必要があります。この点は私も経験がある社外役員の方たちから指導いただきましたので、かなり気にしていました。収益関連でのコントロールできる材料はってなかなか難しいんですけど、クライアントの都合で納期がずれることってあるので逆に、「このクライアントって納期がずれたほうが広告効果がいいのでは?」みたいな案件の把握するようにしていました。収益が想定より悪いときであれば、「どこのコストは先送りできるのか、それはいつまでに判断しないとそのカードを失ってしまうのか」などを意識していました。

予実管理で事業部門の予算がいく、いかないという管理と同時並行で、自分がいつまでに何のカードに対する意思決定を会議体に出さないといけないか、一回で決議できなさそうなものは、いつからネゴシエーションを始めるか、ということに意識があったように思います。

経営管理部門に必要な人材像

ここまでいくと戻れないというのがポイントかなと、お話をお伺いしていて感じました。やはりそういうのがないとズルズルいって、結局ずれて何でなんだっけみたいな話になるかと思いますので、その視点は非常に重要なのかなと。

ここで角度を変えて質問させていただきたいのですが、先ほどn-1よりも前に関しては、かなり最小限の3名体制でやられていたということでしたが、予実管理の体制、もしくは経営管理の体制を構築する上で、必要な人材の要件や、いわゆるペルソナについてはどのようにお考えでしょうか。

和田:ちょっと広めに経営管理部門全体でいくと、これは企業文化もあると思うんですが、私自身があまり管理のための組織を作りたくなかったので、「事業を伸ばすため」みたいなメッセージ性を持って採用活動をやっていました。まずそのあたりに企業文化とか、自分が作りたい組織にマッチするかしないかを大事にしていました。、あまりマッチしない人材を入れて、上場準備の途中で抜けられるというのが一番きついので、それをするくらいだったらそれまでは外部の方にお願いしておいて、しかるべき人が来たらタッチしていく、みたいな考え方でやっていました。そのため、そういう最小限の体制でやっていました。

中途採用した経理の方なんですけど、採用するまでに、100人以上を面接しましたね。少数の組織でいくのであれば、それくらいこだわったほうがいいと思っています。管理部門って、特にある程度キャリアがあるような人は、なかなかすぐには採用できないことの方が多いので、企業文化や価値観がとマッチするほうがいいかなと思います。

続いて、経営管理という意味でいくと、数字が強いというのは大前提ではあるんですが、企業文化によるところも大きいですが、私の場合はさっき申し上げたように、事業部門とのコミニケーションができる人がいいと思います。当然、牽制関係は大事なんですけど、敵対関係になっちゃいけないので、そのへんができるか。管理会計をすごく学んできて、その勉強したことをストレートに事業部門へ投げる人だと、結構対立関係になることも多いかなと。それよりも事業部門を育てながら、一緒に二人三脚でやっていくみたいなニュアンスの方が、会社としても正しい情報を拾うというのが一番重要なので、そのあたりを重視したほうがいいと思います。

加えて、経営管理は自分たちの会社でやっている事業や競合について事業部門と同等以上に詳しくないといけないです。事業部門に「こいつわかってないな」と思われると、情報を詳細にくれなかったり、「適当に都合のいい事を言ってもバレないだろう」みたいなことが起きてしまっても対応できないからです。。そうじゃなくて、「この人に嘘をついてもバレるし、それだったら味方につけておこう」と思ってもらえるような人の方が、多分人数を増やさず精度も高い管理が出来るんじゃないかなと思いますね。

証券会社選びも重要

やはりまずどのような組織を作りたいのかというところからスタートして、そのような人材を集めるために妥協をしないというところと、具体的な要件でいうと、定量がもちろん前提の上で、やはりさっきもおっしゃっていただいたようなコミュニケーションというところが必須になっていくというお話ですね。
せっかくの場ではございますので、あまり表では話ができないような、和田さんの上場準備経験で何かぶっちゃけトークみたいなのがあれば、むちゃぶりにはなるんですけど、お話しできる範囲で何かいただけないでしょうか。

和田:正直結構あるんですけど(笑)。

例えば、みなさん共通で注意されたほうがいいことなんですけれど、事前に競合がすでに上場している場合、事業リスクや関連する法的環境を整備したか、結構影響を受けました。どこのプロセスにおいてかという点は差し控えたいんですけど、我々の事業に対し、指摘のあった法律は明らかに該当しないと認識しており、顧問弁護士も第三者の弁護士も、共通で該当しないという見解をもらっていました。ただ、先方も該当事業のプロではないので「以前上場された企業は該当する整備された」というよう話が出てきました。

私の個人的な見解として証券会社や東京証券取引所で働いている方たちは新規上場企業が上場したあとすぐに何かとんでもないことをやらかして、株価大暴落みたいなことがあるのを一番恐れるんだろうなと考えていました。審査とは、もし万が一にそういうことが起きたとしても、彼らが説明責任を果たせる状況を作るお手伝いだと思って対応していました。だから、網羅的に説明もいるし、時にはそんなこと聞いてどうするの?みたいなこともあります。さっきの話に戻ると、過去の会社さんがそのように整理されたのであれば、該当しないという主張はかえないものの、該当した場合に対する対応が出来ていることも場合によっては説明する必要が出てきます。今日は社長を含めた経営層の方と管理部門で働いてらっしゃる方と両方の方がいらっしゃると思いますが、こういうことは審査のプロセスでは日常的に出てきますので、一喜一憂せず粛々と進めることをお薦めします。

今迄申し上げてきたような内容はなかなか情報公開されないとは思いますが、証券会社の担当の方に事前に調べてもらうことや競合関係であっても聞ける環境を作るなどはされた方がいいと思います。。証券会社さんの選定の時も、なるべく東京証券取引所との関係とか、事前に競合の上場に関与したことがあるかもヒアリングするといいと思います。、運になりますけど、担当者が東証にヒアリングをかけられる、つまり何回か東証審査の経験がある人をアサインしてもらえるほうが、明らかにそういうリスクは減りますね。この辺りも証券会社選定の際に条件として出すといいかもしれません。

かなり生々しいですね。蛇足になってしまうんですけど、私も証券会社の出身ですので、非常に耳が痛い部分もあります。かなり深いお話を交えながら、いろいろと率直なお話をいただき、大変ありがとうございました。

以上、セミナーの内容をお伝えしました。

実際にIPOを経験した和田氏のお話からは、IPO前後の企業に求められるハードルがいかに高いかがよく伝わってきました。

それを助けてくれるのが、精緻な予実管理です。IPOを目指す企業にとって、今や不可欠な要素と言っても過言ではないでしょう。とはいえ、短期間で予実管理体制をしっかり整えようとすれば、それ自体のハードルも決して低いものではありません。

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